79.決意 ページ30
「ベルツリー急行の時は、確かに組織絡みだったがちょっと手違いがあってな…。」
そう言って目を伏せるのは、多分哀ちゃんを生きたまま回収したかったからだろう。
それもそうだ。いくら潜入といえど、人を殺めるなんてしたくないと言うのが本音のはず。
本当は生きていると伝えたいが、それを言ってしまえば新一くんの事も知られかねない。
『…そう言えば、零くんも私に聞きたいことあるんでしょ?ーーベルモットの事とか。』
「ッ」
その名前を出せば僅かに息を飲むのが分かった。
『この前の電話で私がクリスって言ったから、あの時引き止めたんでしょ?』
「…話してくれるのか?」
『零くんだけ話すのは不公平だからね。』
「…ベルモットは、Aに助けられただけと言っていた。」
助けられた、か。
『間違いではないわ。彼女とは2年前、私がドイツに医学留学していた時に知り合ったの。…暗い路地裏で血を流してる彼女を見つけて手当をしていた時、怪我の原因を聞いてもずっとはぐらかされた。…今思えば、きっと組織絡みだったのね。』
「いつ知ったんだ?彼女が組織の人間だと。」
『ついこの前。ベルツリー急行の時よ。知った時は驚いたけど、それだとしたら納得出来ることもあったから。…でも、それ以外では優しい友人だったの。』
まだドイツ語に不慣れな私に、初めて本場のビールを一緒に飲んでリラックスさせてくれたのも。
落ち込んでいる時に気晴らしにとショッピングに誘ってくれたのも、彼女だった。
彼女がいたから楽しかったのだ。
「……ベルモットは、Aに取り入るのはやめろと俺に忠告してきた。」
『え…』
「少なくともAに危険が及ぶのは避けたいらしい。」
彼女は新一くんが幼児化している事を知っている。
だからその親戚である私が彼に協力している事も知っていておかしくはない。
だから彼女にとって私は邪魔者のはず。
それなのに私を消そうとしないのは…
「きっと彼女も、Aをまだ友人として見ているんだろうな。」
『…いっそ、敵だって突き放してくれた方がよかったのに。』
こんな所でそんな優しさを出さないで。
貴女とは、敵なんだから。
でも、なら私は…
『…どの道私はすでに巻き込まれている身。もう誰も傷付けられない為に、あの組織を潰す為に協力するって決めたの。』
零くんの目を真っ直ぐ見てそう言えば、ニヤリと笑った。
「…無茶したら、許さないからな。」
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YuasA(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます!次回も楽しんで貰えるよう頑張ります! (2022年1月19日 0時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
みん - 最高過ぎます!毎回楽しみです!!ありがとうございます!ありがとうございます!!! (2022年1月18日 23時) (レス) @page50 id: 0b35b5e05a (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - あかねさん» ありがとうございます!もっとニヤニヤできる作品に出来るよう頑張ります! (2022年1月18日 22時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 最高です!ニヤニヤが止まりません… (2022年1月18日 20時) (レス) @page49 id: bf2afdf343 (このIDを非表示/違反報告)
YuasA(プロフ) - ぱるむさん» ありがとうございます!次からも面白い作品になるよう頑張ります! (2022年1月8日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月6日 19時