工藤優作の従兄妹は美人医師。2

77.事件性 ページ28

『依頼…になるかな。先月の終わりから、うちの産婦人科に受診する未成年の中絶希望の妊婦が多くなってきたの。今月だけでも3件…いくら何でも多すぎるのよ。』

「その患者の様子はどんな感じだ？」

『私はオペの時しか会ってないけど、診察をした先生曰く、泣きながら中絶希望をしたそうよ。それが被害を受けたからなのか、中絶をする決断をしたが故の罪悪感なのかは分からないけど。』

「そうか。…ちなみに、もし事件性があったとして、被害に遭った大体の日を割り出すことはできるか？」

『一応問診があるから出来なくはないけど、妊娠の陽性反応が出るのは大体被害に遭ってから最低でも2週間以上かかるし、あくまで予想に過ぎないから…』


本人の口から聞くのが1番早いが、それが一番難しい。
大人である私たちでも抵抗のある内容を、未成年の子に話させる事なんてできない。


「彼女たちは1人で病院にきてるのか？」

『最初はね。けど中絶はお金がかかるし、パートナー…もしくは親の同意が必要になる。最終的には親が出てこざるを得ないのよ。望まない妊娠なら尚更ね。』


むしろ最初から親と受診したのはこの前の子だけだった気がする。


「内容が内容なだけに、被害届も出せない、か…。」


被害届を出せば、警察で事情聴取としてその時の話を聞かれるだろう。犯人が捕まって裁判などになったとしても、それは避けられない。

けどその度に、被害者はその恐怖と悪夢のような事態を思い出す。親としても、自分の娘にそんな酷なことはさせたくないのが本音という所だろう。
所謂、泣き寝入り。


『…でも、被害が出ているのは杯戸町なのは確実よ。他の先生がそれとなく別の地域の仲のいい産婦人科医に聞いてみたら、未成年の中絶希望者の増加はないって言われたみたいだから。』

「杯戸町だけか…エリアが絞れているなら、手当り次第犯人が犯行を起こしそうな場所を張り込めば可能性はあるが…」


けど、あくまで全て「事件性がある」と仮定した場合の話。


「せめてその患者たちの詳細がわかれば…」

『ご、ごめん…依頼しといて何も情報言えなくて…』


いくら依頼で彼の口が堅いといえど、勝手に個人情報を話すことは出来ない。彼女たち自身が調査を依頼するなら話は違うが。


「Aが気にすることじゃない。けど、他の医師も疑問に思っているのなら遅かれ早かれ被害届は出されるだろう。」

『う、うん…』


もし事件性があるのなら、一刻も早く犯人を捕まえないと。

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