工藤優作の従兄妹は美人医師。2

72.謎解きするバーボン ページ23

『合鍵なら、凍らせたスポーツドリンクの中ですよ。』

「無理ですよAさん。私もそのドリンク飲ませてもらったけど、ほとんど凍ってて中身が中々出てこなかったんだから。 」

『凍る前に入れたのよ。けど入れたのは普通のスポーツドリンクじゃなくて、過冷却したスポーツドリンク。』

「過冷却…？」


首を傾げる蘭ちゃんたちに、あれ？これって今高校とかで習わないっけ…？と思いながら説明しようとするが、それよりも前に安室さんが口を開く。


「過冷却水。水が凍るはずの凝固点、0℃以下になっても氷にならずに液体のままでいる水の事で、振動などの刺激を与えると急速に凍り始めるんです。」


…さすが、もう彼が何を知ってても驚かないわ。
逆に知らないことなんてないんじゃないかしら。


「作り方は、均一に冷えるようにペットボトルをタオルで巻き、-5℃くらいの冷凍庫に4〜5時間寝かせるだけ。」

『振動を与えるとペットボトルの表面に沿って上の方から凍り始めるので、多分琴音さんは過冷却になったスポーツドリンクに鍵を入れてから振動させ、上の方が凍ってから上下反転させて鍵をペットボトルの真ん中に来るようにしたんです。』

「スポーツドリンクは濃い色が付いていますし、ジェル状に凍るので中の鍵は見えなかったという訳です。…過冷却は医学でも度々使われますしね、Aさん？」


交代で説明をしていれば最後にまさかのパスが来て思わずジト目で彼を見てしまう。


『え、えぇ…確かに使う事はありますね…。』


こんなどうでもいいパスしないでよ!!
ただでさえ新一くんからの疑いの視線強いんだから!!


「そ、そんなの出てきてから言いなさいよ！」

「もしも出てこなかったらあんたら…！」

「ダメよ。出てきちゃうから……私の指紋がバッチリ付いてる合鍵がね。」


琴音さんはその言葉をきっかけに全てを語り始めた。

動機はやはり、亡くなった瓜生さんの敵討ち。
不用意な石栗さんの言葉を真に受けてしまったが故の事故だと思われていた彼の死が、実は石栗さんの手による殺人だったと分かったから。


……敵討ち、ね。
一体、それを誰が望んだのかしら。


「けど失敗したわ…石栗くんの昼食を確実にアイスケーキにする為に、誰でもいいからちょっと怪我をさせて別荘に招き、昼食の人数が増えればいいなと思って投げたラケットだったのに…まさかそれが子供の頭に当たって、その上その子の連れが名探偵毛利小五郎だったなんて…。」

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