第八十七刀 ： いかなる因果か運命か ページ8
刀が刀を「薙ぎ払う」という瞬間を、
俺はここではじめて目にした。
「わかるか、新人？ これが大太刀だ。
そして薙刀でもこれが出来る。
お前の本丸に大太刀も薙刀もいないなら、
どっちでもいいから、一振りくれぇ鍛刀しておくべきだぜ」
男はどこから出したのか大きな酒瓶をあおると、
にやりと心好い笑顔を向けた。
「・・・・」
俺がその言葉に
頷くことはなかった。
―――・・
そうした愉快な男が酒瓶片手に去っていく。
そうした背中を見送りながら、静かになった戦場を見回す。
「・・・・・？」
土壌に転がった刀剣と、
膝をついた探究側の審神者がいた。
―――そしてそこに三日月がいた。
「・・三日月さん？」
三日月は見下ろしていた探究側審神者から離れ、
彼は静かに立ち上がると、変わらぬ微笑みを携え、
馬と共に待つ霞の前までやってくる。
「かえるとしようか、主よ」
今日の夕餉には野菜の醤油煮込みが食べたいなぁ、
笑った三日月はなんの迷いもなく霞の腕をひいて抱えた。
その一部始終を青江が見つめている気がしたのは、
きっと気のせいではない。
「主、ここで座り辛くはないか？」
「・・ああ・・」
抱えた身体をそのまま持ち上げ、
そんな青江の視線など意に介さない三日月は、
霞を馬の背へと乗せた。
―――それは酷く、愛おしげな眼差しで。
いつかこの瞳に折れる日が、
俺に訪れるのだろうか。
＊
筑前国に戻ってきた。
出迎えはへし切長谷部と燭台切光忠、そしてこんのすけ。
廊下に回収した資材を置くと、
早々に霞はこんのすけに向いた。
「ねえ、こんのすけさん。
俺が出陣した先に、
政府が派遣してくれたのは誰なんだい？」
『はい？ いいえ。こんのすけめは、
政府からそのようなことをお伺いしてはおりませぬが』
「・・え？」
きょとん、と両目をしばたかせ、
しかしこんのすけは、知らないという。
『・・審神者殿』
と、ここでこんのすけは、
ふいに首を傾げて問いかけてきた。
『・・その、助けてくれた審神者様は、
いったいどのような風体(ふうてい)でございました？』
何か、思い当たる節があったように、
こんのすけはじっとこちらを見上げている。
「風体、って・・
ああ、そういえば、
酒瓶もって太郎太刀って大太刀をつれてた」
『・・・ ああ、』
そうでしたか、と。
こんのすけは、
何かに酷く納得したように頷いて、いった。
―――それは本丸を持たず過ごした、放浪の審神者様です、と。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
