第八十四刀 : あきらめ ページ5
――――「だから申したのです・・・
鍛刀は、おすすめできないと・・」―――――
鍛刀部屋の扉から聞こえる声に振り返る。
江雪左文字は自身の依代である「江雪左文字」を抱きかかえていた。
「・・左文字さん・・」
すっと霞の真横まで歩を進め、
左文字は依代を腰へと帯刀しなおした。
「あの忠臣・・・
あなたのことを思うあまりに、
私の本体を資材貯蔵用の蔵へ隠したのですよ・・・
貴方を心配し、心配するが故の戦力増強で、
鍛刀をすすめるそこの案内狐の邪魔をさせないために」
左文字の視線はこんのすけに向いていて、
しかしこんのすけは、
完全に視線を床へと投げたまま動かないでいる。
「江雪くんじゃないか!
ここへ入れるってことは、今は君が主の近侍なんだね。
よかった! 僕たちは本当に、いい主に巡り合えたよね!」
「・・・」
きっ、と燭台切を見据えると、
左文字は霞の前へと進み出た。
「何はともあれ、嬉しいな・・
これから、よろしくね、主!」
―――俺は
その言葉に頷くことすら出来なかった。
*
それからしばらくして、燭台切光忠は大広間へと招かれた。
あらかたの紹介をすませ、そして彼は広間を見回すと、―――首を傾げた。
「・・三日月くんは?」
「・・・・」
広間の誰もが口を閉ざす。
「・・自室だよ。
三日月さんは、一人でいることが多いから」
そう言葉を濁し、改めて吐き捨てた。
「・・これから、よろしく、」
絞り出すように、しかし吐き捨てたそれは
どこまで感情を読めただろうか。
――――その翌日
政府から「出陣」の通達が届いた。
『審神者殿、通達はご覧になられましたね?
歴史改変を目論む刀剣たちが、函館に現れました。
探究側も同時に向かっています。
彼らを止めに、函館へと発ってくださいまし』
「・・・わかった」
―――通達を見たとき、俺はついにきたかと、「諦めた」。
どの道いずれは訪れることだ。
嘆こうが悲しもうが、
嫌がろうが拒絶しようが、
―――世界は同じ結果を導く。
だったら何事だってはじめから、
覚悟をきめてかかったほうがいいじゃないか。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます! (2015年11月8日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい!」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・!(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年8月10日 1時