第百一刀 ： 審神者 ページ22
社を出れば、神社のすぐ正面に、見覚えのない男性がいた。
「・・筑前国審神者様ですね？」
彼はまっさきに傍にいる左文字を見た。
何もかも理解していて、ここへきているのだろうとわかった。
「・・はい」
そして彼が、これから自分たちをどうするつもりなのか。
それが気になった。
「・・政府の者です。
話は、こんのすけを通して伺っていました。
どうか、このまま政府へと足を運んではくださいませんか」
そちらの方もご一緒に、と、苦々しい表情だった。
それは、あの場所で何があったのかを、
理解して、感情を乗せているようで。
「・・はい」
小さく頷いて、左文字の様子をうかがう。
彼は無言のまま、ただ、
そっと寄り添うように、霞の側にいた。
「・・・行こうか」
「ええ・・あなたが行くのなら」
彼もまた頷いた。
そして思う。まるで子供のようだ、と。
それでも、彼が傍に居る。
それだけが、救いだった。
＊
つれてこられたのは政府の管理する病院。
静かな場所を選んだのだと、男は苦笑した。
「・・霞殿・・」
困惑げに周囲を見回す左文字。
大丈夫だと、霞は笑う。
「・・お名前を、教えたのですか？」
「え？」
政府の男は驚いて振り返る。
「・・いえ・・本来なら、
それは審神者として、あるまじきことなのです」
「・・名前を、教えることが？」
聞き返せば、男は頷く。
「付喪神に名を知られれば、いずれ魂ごと支配されてしまう。
文献には書かれていましたが、それを立証できる事例がありません」
しかし、直後、彼はゆるやかに首を振り、そして、と溢す。
「もう、あなた様は審神者に戻ることはございません。
その者も、自覚など残ってはいない・・もう、よいでしょう」
それはどこか憐れみさえ含んでいたように感じた。
しかしそれは、恐らくもう、無意味だとわかっているからだ。
「あなたはあまりにも哀れな、残酷すぎる経験をもった。
だからこそ、あなたは、特例として、現世で、
そちらの付喪神とともに生きることを、許されました。
定期的に行われる政府の会議に、彼と共に参加する事を交換条件に」
「・・・つまり、監視されながらなら、
俺は左文字さんと生きられるってことだね・・・」
「・・ええ」
構わない、と微笑んだ。
男は、安堵したように、ありがとうと呟いた。
―――あまりに短い審神者としての仕事を、終えた瞬間だった。
そして俺は忘れていた。
いつだかの、左文字さん本人の忠告を。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
