(※)第九十八刀 ： 悪意なき檻 ページ19
その刃が向かう先を、俺は予想する必要もなかった。
ぐっと左文字の体を離し、―――前に出ようとしたのに。
「！ 左文字さん！！」
抱きとめるように強く、左文字がこの身を抱えた。
「どうして！」
強く、もう一度だけ強く抱きよせて、
「・・手を、離せば、あなたはきっと、傷ついてしまう・・――」
そうして、とてもやさしく、
「主よ、」
とん、と突き飛ばされた。
「名も知らぬ貴方を愛した私を、どうか笑わないでください」
美しい白銀の刃は、美しい青銀の神を貫いた。
「――― ！」
その声は最後まで聞こえなかった。
「だから言ったでしょう・・戦いは、嫌いだと・・」
・
からん、とあまりにも軽々しい音に聞こえた。
「・・のう、主よ」
中心から真っ二つにされた、雪のように、美しい刀身。
「・・俺はな、はじめから、
こ奴ならお主を囲うだろうと、わかっておったのだ」
吐き出しかけたこの声は届かない。
「お主が、命さえ失いかねない状況になれば、
一瞬程度は迷うだろう。しかし確実に、何か一つでもきっかけがあれば、
お主を愛した江雪左文字だ。つれていくとわかっておった」
血液のようにどろりとはしていない。
「鵜丸兼定も、仲間を食い尽くせば俺を恨み、
俺のいる本丸を襲撃するだろうと考えた」
ひたひたと床に落ちるそれは真新しい板に染みを作る。
「だからこそ愚かな人間にきっかけを渡し、
鵜丸兼定の居場所を突き止めさせ、そして、俺は総てを食い尽くした。
――人間は、さすがにまずかったな」
床板がきしみ、見えた白亜の足先。
「主よ、俺ははやく、お主のつくった食事がしたいな」
ぬるりとまとわりつく感触が、
はたして誰の血で、しかし液体なのか、
―――指先だったのか。それさえもわからなかった。
「何を悲しむことがある。
さあ主、俺と共に、ここで永遠を生きようではないか」
頬を伝った雫をそっと拭い去り、
人とは違った冷え切った唇に触れる。
口付けられた自身のそれでさえ、そこからじわりと、
生ぬるい風に支配されていくようだと思う。
―――体温などない刀の温度が、全身をはっていく。
「随分と、熱烈な神隠しだね」
空気さえ変わったのかと、思った。
「だけどこれはあまりにも、自分勝手で、
悪質じゃぁないのかい、三日月くん」
三日月の表情がかわる。
「左文字は、兄弟思いの付喪神だよねぇ、主？」
「・・・あお、え、・・さん？」
にっかり青江が、楽しげに笑う。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
