第九十二刀 ： 悪 ページ13
――――季節は初夏だ。
もうすぐ夏が来る。
その日は晴天だった。
『審神者殿!!!!』
夏が近いからといって、暑くもなく、
初夏だからといって、涼しいわけでもなく。
―――晴天であるからといって、決して乾いた空気もなく。
上空とはまるで正反対の地上の「感触」が、
じっとりとこの身ににまとわりつく日だった。
こんのすけの大きくもない足音ともに、
慌ただしく広間の障子が開けられた。
「こんのすけさん？」
「彼」が姿を消して一夜。
朝の太陽がまとわりつく湿気に
更なる不快さを分け与える青空のもと、
『三日月宗近らしき付喪神が戻りました！
本当にこの本丸所属のものかの、ご確認を！』
―――平安の燈が舞い戻った。
「・・三日月さん・・？」
「はっはっは、戻ったぞ 主。
軽く散歩にでも出たつもりだったんだがなぁ。
気付けば知らぬ都におった」
「笑いごとですか・・」
はじめに迎え入れた宗三が呆れた声で吐き捨てる。
―――霞を目にしてようやく開かれたらしい彼の口から零れたのは、
呆れを通り越して諦めの吐息をおとすほど情けない言葉だった。
「・・三日月、さん・・？」
繰り返す。
呼ばれる度三日月はきょとんと首をかしげるが、
「・・・本当に、三日月さん？」
「・・何を薄情な。
俺は俺しかおるまいよ。
それとも、俺のいぬ間に新たなる俺が鍛刀されたか？
それは折らねばならぬなぁ」
――隠しもしない、非道な言葉。
しかしそうではない。
確かに、確実に、今この目の前にいる美しい神は、
間違いなく、まごうことなく「審神者業」の一振り目。
―――しかし、そうではないのだ。
(・・・)
ねぇ、どうしてそんなに、
(瞳が紅いの？)
まるでそれは赤ずきんが祖母に扮したオオカミに問いかけるような。
そんな子供じみた馬鹿馬鹿しい問い。
確かにその目には下弦の月が浮かび、
以前と同じ、"主以外が存在しない世界の三日月宗近"であるが。
あの時、最後に触れたときに見た。
―――彼の瞳は確かに、濃紺のように青かった。
「・・・・主？」
近侍として傍に居た左文字が顔をのぞきこむ。
―――のぞきこもうと頬を寄せた、その直後。
「・・主よ、俺は鶏とかぼちゃの照り煮が食べたいな」
「さっ、「！ 兄上！」
まるで遮るように、宗三が慌ただしく声を出す。
―――左文字の鼻先を突き抜けた三日月の刃先は、ゆるやかに鞘へと戻される。
「さぁ、主よ。
手入れついでにつくってはくれぬか」
――三日月は笑った。
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます！ (2015年11月8日 0時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい！」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・！(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年8月10日 1時
