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第八十刀 : 手遅れの未来 ページ1

気まずい。
正直に言えば、あまり顔を出したくはない。
しかし出さなければ、彼はますますこじらせるだろう。

「 三日月さ 「主!」 うわっ」

意を決して扉までやってきて、声をかけようとした直後。
呼びかけを終える前に、開かれた扉から伸びてきた腕にとらわれた。
そのまま抱きかかえられ、彼の自室に引きずり込まれた。

「・・あ、――じ、・・」
「三日月さん・・!」

まとわりつくようにしがみつく両腕、震える声。
―――直感した。これは、重症だ。

「あ、あるじ・・あるじあるじ、どこへ行っておったのだ?
お、れを放って、どこへ、行くと言うのだ・・!
主、俺は一人で待つことなど出来ぬのに・・
俺を、俺を一人にしないでおくれ・・!」

震える声も、覆い隠す腕も、徐々に強さを増していく。
いっそぎりぎりと締め付けるような力加減に、こちらの声も震えそうだ。

「あるじ、のう、主?
この匂いはなんだ?主の身体にまとわりつくこの気配はなんだ?
刀剣ではないな?人間か?主、主は俺を置いて、誰に会って来た?
やはり主は、同じ人間でなくてはいけないのか?
そやつに会うために主は俺から離れたのか?
俺があの時なんのために主をこちらへ引き戻したと思っておるのだ?
のう、主、答えてくれ。
主は誰と、どこで、なんのために、

―――俺を置いてまで会いに行ったのだ?」

―――こわれていく、こわれていく。

かつて俺を引き込んだ付喪神は、
いま、俺の招いた結果によってこわれていく。

離れたかと思えば、震える指先で頬をなぞり、
下弦がぐらつく瞳で、すがるように問うてくる。
逃がさぬと言わぬばかりに掴まれた腕には、
――三日月 宗近が決して取り戻すことのない、奪われた「希望」があった。

「ごめん、三日月さん・・
俺はそれを、あなたには話せない・・!」

自分自身も、悲痛に歪ませた表情であったのだろうか。
故にか、しかし霞は、
その腕を引き離すことは、出来なかった。

「――――、あるじ、」

きっとそれさえもこの神は
見据えて察していたのであろう。

泣きつくように彼は、再び霞を抱き寄せた。

「―――何故、何故だ・・?
主、主よ、何故俺ではならぬのだ・・何故、
俺は、俺はこうまで、お主を、」

―――この先
繰り返し縋り付くであろうこの腕を
俺は二度と突き放さないのだろう。


「―――、俺はお主を愛しておるのだ。
神の執着は、決して甘くなどないぞ―――」



俺はあの夜
この月につかまってしまったから。

第八十一刀 : 流れる→



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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛(男審神者主)   
作品ジャンル:その他
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遊藍 - 蒼さん» ありがとうございます。燭台切さんの執念、だなんて素敵ですね(笑)・・青江さんと左文字さんにも注目して頂いて・・こんな遊藍めの作品をご閲覧頂き、ありがとうございます! (2015年11月8日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 今までヤンデレって好きじゃなかったんですよね。自分中心な上に重すぎるというか…しかしこの三日月は違和感ないです、笑。刀剣乱舞の画像で目が離せなくなる美貌を持つ彼が抱える闇に納得するくらいです。燭台切の執念、左文字と青江も良かったです。 (2015年11月5日 22時) (レス) id: 98f743b05f (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 三条朔月さん» そうです、「つよぉい!」を強調する黒い兼定さん。カカカ殿は、一度の出陣で2〜3振ひろってくる、なんて、よくあります・・うう・・・鍛刀で出せる刀剣で、残っているのは、狐だけなのになぁ・・やっぱり第二部隊で、5−3いってもらえるように頑張りますか・・ね・・・ (2015年9月26日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
三条朔月(プロフ) - かっこよくて強いか (2015年9月24日 23時) (レス) id: 04413a2bd7 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 大変・・!(そしてその気持ちもわかる・・)遊藍の場合、五面は基本カカカ殿です(涙)たまにだぬぽんか和泉守さん・・ (2015年9月24日 22時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年8月10日 1時

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