第七桂 ： 足りないもの ページ10
備前国本丸にたどりつき、
左文字と共に扉を叩く。
さて、誰がどう、出迎えてくるのだろうか。
「は〜いはいはい」
少しして、妙に間の抜けた声と共に木戸が開かれる。
声は女性。ということは、この本丸の審神者が自ら出迎えてきたということか。
「あら、思ってたよりかわいいじゃない」
女審神者はそう言って口端をあげた。
「・・なんだ、審神者はあのような男が好みか」
「やぁね、嫉妬しないで。一番は三日月よ、いつだってね」
微笑む審神者は実に嬉しそうで、
――しかし僅かな違和感がよぎった。
それが何かはわからない。
「・・主。自己紹介を」
左文字が促す。
お、そうだった、と姿勢をただす。
「はじめまして。
俺が関わるはずのない世界からきた政府直属の審神者です。
むしろ審神者かどうかも最近は怪しいけどね」
まとめ、言い終えると、一礼。
「・・近侍の、江雪左文字と申します」
左文字も、また一礼する。
「あぁ、よろしくね。
今日から研修に入るのよね。
半年だったかしら」
「・・ええ、予定では」
――それは、あくまで予定。
そう、この本丸での真実が暴けなければ、
半年は、一年にもなるし、
暴ければ、――ひと月にもならないかもしれない。
「私は谷之(やの) 美花(みはな)よ。
あなたは別に名乗らなくてもいいわ。
禁止されてるとかいうし」
「・・そうですか」
あっさりと名乗るミハナに戸惑うが、
禁じられているということもわかっているし、
本人がそう決めたなら、構いはしないが。
「・・・」
―――― 一方の三日月宗近は、
零れそうになる笑みをおさえるのに必死だった。
「先輩」をとりつくろう女審神者。
その努力など気に掛けず視線を流す、研修生審神者。
――この穏やかに整った顔が、
この先どう変わり、どのように溺れていくのだろうかと、
それを考えるだけで。
「三日月、あなたも名乗りなさい」
さっと視線を流し、ミハナが三日月に告げる。
「お、そうであったな」
『三日月宗近らしい』、
天然さを意識した。
研修生審神者の視線が振り返る。
美しく妖艶な笑みを、意識した。
「三日月宗近という。よろしくたのむ」
名乗った先で、研修生審神者の表情は変わらない。
じっとこちらを見据えて、――ふむ、と小さくこぼす。
「打ちのけ、だっけ？
三日月の形をしてるのは本当なんですね」
彼はすぐさま、隣にいる近侍へと目線を外した。
「・・・ 、？」
―――わからない何かが、足りなかった。
第八桂 ： 奇妙奇怪・奇奇怪怪、本丸→←第六桂 ： 三日月宗近(備前国)
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
