第六桂 ： 三日月宗近(備前国) ページ9
小狐丸の来訪から二日。
任務の依頼書を出してもらって、
桜夜は政府依頼のもと、件の審神者がおさめる本丸へと向かう。
調査によると、条件に合致する本丸はどうやら、備前国の本丸であるらしかった。
「それじゃ、行ってきます」
「ああ・・気を付けて・・
しかし、今回も、他に刀剣男士を連れて行かないので？」
政府施設玄関口から見送る草壁。
相変わらず今回も、
二日の猶予を与えたというのに、
桜夜は鍛刀しなかった。
故に、今回の同行者も、
近侍の江雪左文字のみである。
「いいんですよ。
別にわざわざ鍛刀することもないんです。
むしろ連れて行く刀剣が多ければ、
そのほうが向こうの警戒心を強めてしまう」
「・・そうですか・・」
サングラスの奥に隠された瞳の色彩はわからない。
けれど、口先からこぼれた言葉には、
おぼろげながらも心配げな声質がうかがえた。
「・・草壁さん俺はね、左文字さんがいればそれでいいんだ」
「・・審神者様・・」
最後に微笑んで、左文字とともに、政府の門に背を向けた。
―――左文字がいれば十分だ
それは確かにその通りだった。
この時、俺の中には、―――江雪左文字しかいなかったから。
皮肉な運命を
人はきっと宿命というんだ。
そして俺は
皮肉なほどに美しく
美しさにすがりつく美しさを憎むあの月に出会う。
＊＊
―――備前国本丸：通用門
木板の扉を前に、桜夜と左文字が問題の本丸を見上げている。
「・・・ん？」
本丸の二階にある自室から気づいた、―――備前国の三日月宗近は見下ろす。
「・・おや、なんだ。
また新しい研修生とやらか」
背後にある褥からは、布のこすれる音が聞こえてくる。
寝返りをうつ審神者の娘が、口先だけで何かを呟く。
「・・同じ名だな。
・・この娘、本当に気付かれていないと思っておるのか・・」
狩衣の袖口を口元に運び、隠すように、くつくつと笑った。
「・・今度の審神者は男か。
さて、次はどのくらいの日数、俺に耐えることが出来るかな」
以前までの最高記録は、そう、一週間であったか。
「面白い審神者だ。
近侍一振りしか連れてこぬとは」
――近侍に何かを離しかけた後、審神者が扉を叩いた。
「・・やれ、遊戯のはじまりだ。
審神者よ、起きろ。来客だぞ」
「・・ん、なに、三日月・・」
衣類を一切身にまとっていない彼女に、
甲斐甲斐しく慌てた素振りで着物を手渡す。
「見ろ、来客だぞ」
「・・あぁ、」
――女は軽く着物を羽織り、部屋を出た。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
