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第二十三桂 : 異質 ページ26

『研修生』と名乗る男審神者が現れて、四日目。
徐々に、本丸内でも、研修生の存在が目立ち始めた。

現時点で、愛すべき我らが審神者であるミハナは変化を見せない。
それよりも、問題があるのはその近侍、三日月宗近だ。


「のう、研修生、実はな、縁側で花を見かけてな。
審神者に頼んで摘ませてもらったのだ。ほら、綺麗だろう」
「・・確かに愛らしいと表現するに相応しい花ですね。
これは恐らく桔梗でしょう。
花言葉は諸説ありますが多いのは『気品』、『永遠の愛』ですね」

縁側から摘んで来たと言う薄紫色の花、桔梗。
あの花は主殿が気に入っていた花だった気はするが、
ああして三日月殿が摘むことを許可したのだ。
恐らくそれほどではなかったのだろう。

「そうだな。しかしな、のう、研修生よ。
桔梗の花言葉には、『誠実』というものもあるのだ。
俺は数多とある花言葉の中でも、それが一番好きでな、」
「・・そういう花言葉についての話は、俺のような男より、
この本丸の主である彼女のほうが好きだと思いますよ」

そう言って研修生は近侍と共に食堂を通り抜けて行く。

・・・三日月殿は何をお考えなのだろうか。

「・・お主の好きな花を、聞きたいのだ」

わからぬか、と寂しげに溢す彼の意図がわからない。
それを聞いているのかいないのか、
研修生は振り返る事なく完全に食堂を後にした。

――彼は今日も、刀剣たちや主殿と、食卓を共にはしなかった。

「・・わからぬのか、・・」

もう一度呟くと、三日月殿は手にしていた桔梗を握りつぶした。

(・・あれだけやわらかく握っていたのに、・・)

しおれぬように、手折ることのないようにと。
ありありと伝わるような、優しい指先だった。

「・・三日月殿」


――歩き去った研修生らを追いかけることなく、
床へと目を伏せている三日月に、
怪訝な眼差しを向けつつも一期一振は近づく。

「・・何用か」

本日の三日月は機嫌が悪いらしかった。

「・・あまり、あの研修生に近付かない方がよいのでは?」

地雷だ、と思った。思っている。分かっている。
わかっていても、目に余る理解不能な三日月の行動に、
さすがに言わねば耐えられなかった。

「・・・何故、そのようなことを言う、」

―――地雷、どころではなかった。
問い掛けた途端三日月は眉を中央に寄せ、今にも泣きだしそうだ。

(・・しまった!)

焦った。異様なほどの反応だった。
一期は必死に謝った。

――それが異常であることに気付かずに。

第二十四桂 : 異質なのは、だれ?→←第二十二桂 : 動かぬ視線



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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛/男審神者主   
作品ジャンル:その他
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・!いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます! (2015年12月7日 7時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・!ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね!ありがとうございます! (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています!これからも頑張ってください! (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます! (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました!三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年9月25日 22時

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