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第二十一桂 : 行き詰る、息詰まる ページ24

正直、まず話を聞く前に。
この本丸の刀剣たちから、警戒心をなくしていかなくてはいけない。
しかし困ったことに、誰からならば、警戒心を解いていけるのだろう。

「三条は駄目、燭台切も微妙、頼みの青江さんは出陣・・まいったね」

備前国本丸へと潜入して三日目。
桜夜は相変わらず、あてがわれた自室で頭を抱えていた。

「・・腹減ったな」

端末で時間を確認する。
ちょうど昼時だった。

「・・万屋にでも行くかな・・」

思い立ち、腰を上げる。
障子の向こうに鎮座する左文字に声をかけた。

「左文字さん、万屋に行こう。
今ならここの刀剣たちは昼餉に取り掛かっているはずだから、
俺たちは簡単に万屋か食堂街ですませよう」

――どうせ経費でおちる。
元より外出は禁止されていない。
それは恐らく、部屋にこもりっぱなしでは怪しまれてしまうから。

戸板をあけ、階段をくだり、廊下へ。
しばらく歩けば広間が見えてくる。
広間からかろうじて見える炊事場には、
眼帯が特徴的な燭台切がいた。
その後ろには三日月が立ち、
せわしなく動く燭台切の手元を楽しげに眺めている。

「光忠の、これは何を仕立てておるのだ?」
「芋の煮物にしたいからね。
皮をむいて、主が好きな熊の形にしようと思って」

鍋の中に、燭台切が切ったのだろう、食材が転がって行くのがみえた。

「・・・!」

はっとこちらに気付いたのはその燭台切ではなく、
ふと顔を上げた三日月だった。

「研修性よ、お主も来ぬか?
光忠の仕上げる煮物は格別なのだ」
「・・ちょっと、三日月さん・・やめてくれないかな」


―――きっとその、"やめてくれ"は。
恐らく自身の手腕への謙遜ではなく、
『俺達を誘う事への』やめてくれないか、だろう。

「・・・」
(・・これは、)


足を止めて見てみれば、
実にわかりやすく、彼は一方だけの眉をよせていた。

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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛/男審神者主   
作品ジャンル:その他
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・!いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます! (2015年12月7日 7時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・!ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね!ありがとうございます! (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています!これからも頑張ってください! (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます! (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました!三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年9月25日 22時

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