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第十一桂 : 関係性ひとつ。 ページ14

自らも自己紹介をしてみせるが、
彼らの視線は一部をのぞき、
何故だかやけに突き刺さった。

解散とともに小狐丸が群れを抜け出し、
ちょこちょことこちらに寄ってくる。
ミハナは他の刀剣に囲まれ、――明らかに心配されていた。

「あぁ、審神者さま、よくぞいらしてくださいました。
もう、この二日間は刀剣らの視線が息苦しゅうて、
この小狐、押しつぶされそうでございました!」
「・・同じ刀剣男士でもこうなのか・・それはきついな」

毛並と自負するやわらかい髪を、
ぐりぐりと押し付けるようにすりよれば、
視線はさっと他の刀剣らに向く。

「あれは・・あの視線は、あの空間は異質です。
この私が今までに見てきた何よりもどろどろとしていて、
ねばりつくような視線を這わせ、慣れぬ刀剣には警戒心をむき出しにする・・
何故、この本丸がそのように濁っているのかが、愚かな小狐めにはわからぬのです」
「・・おかしいなとは、思っていたけどねぇ・・」
「・・彼らの空間はまるで、
何かから、今であれば我らから、
遠ざけるために、彼女を囲っているようですね・・」

左文字が目を伏せる。
軍勢の中からは、心配する声にまじり、
妙にうれしそうな彼女の声が聞こえる。

「だから、大丈夫よ、一期。・・心配しないで」
「ですが主殿、お頼み申します。
この一期一振、主殿が心配なのです。
どうか、どうか夜伽を、私の力をあなたに、」

すがりつくように申し出る一期の声。
それを制するように響く、聞き心地は悪くない低音。

「一期くん、それをすれば三日月くんが黙っていないだろう?
どうなるかわかっているんだから、大人しく従っていたほうがいい。
彼は、この本丸の一番の古株なんだから、彼に任せておけばいいんだ。ね?」
「・・・光忠殿っ、」

苦々しげに声をこぼす。
一期は苛立ちを隠す事無く足早に、広間を出て行った。

「どいてください!」

その一期の叫びと同時に、何かを突き放す音がする。
―――もしや、と耳を傾けた。

「やれやれ、気性の荒い男だなぁ」
「あら、三日月!」

ミハナはあからさまなほどに声を高くあげ、
大喜びで集団から抜け出した。

「ああ! あるじさま!」

切なげな声で呼びかける声がする。
群れから唯一の短刀がとびだしていた。
今の声は彼か。

ミハナは三日月に抱き着いた。

―――その三日月がふと、
僅かに笑ってこちらを向いた気がしたのは、気のせいだろうか。

第十二桂 : 月と狐がひとつ。→←第十桂 : 備前国本丸・所属刀剣



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設定タグ:二次創作 , 刀剣乱舞 , 腐・恋愛/男審神者主   
作品ジャンル:その他
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・!いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます! (2015年12月7日 7時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・!ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね!ありがとうございます! (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています!これからも頑張ってください! (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます! (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました!三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊藍 | 作成日時:2015年9月25日 22時

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