第三十桂 ： 無知 ページ33
沸かした湯で温めたタオルで、三日月の身体を拭いてやる。
一通り拭き終えたら、乾いたタオルで全身をはたいていく。
刀のことはよくわからない。
目の柔らかいタオルを使った。
「うん、世話されるのは好きだ」
その作業が全て終わるまで、三日月は見事に大人しかった。
(本当に、自分では何も出来ないのか、――)
狩衣を預かり、左文字にたくして、洗濯にまわす。
三日月には内番服を着せ、次には刀身に気を向けた。
刀そのものには特に問題がなかったが、
鞘と柄が濡れていた。
(絹か何かで拭けばいいのかな)
鞄から着物を引っ張り出す。生地は絹。
布ばさみでそれを切り取ると、そっと鞘を拭き上げていく。
「そこまでしてやる必要など、」
小狐丸が顔を出して、手元を覗き込んで口にした。
「・・鞘から水が垂れて、万が一、刀身が錆びても困るからね」
俺のせいではないのだけれど。
言いかけた言葉を飲み込んで、きゅっと最後に一拭きしておく。
柄の水気もしっかりと拭き上げ、刀身を収めた。
「すまんな」
本体を手渡す時、三日月は笑った。
「・・今度から、何かあった時は審神者の所に行けばいい。
あんたのことが大好きな審神者だ、
何かあればすぐにでも行動してくれるさ」
そう言えば、三日月は驚いたように両目をしばたかせた。
「・・俺はここにきてはいけないのか？」
どういうことだ、と眉を寄せれば、
「小狐丸は、許しているのだろう」
不機嫌そうな声がかえった。
「・・いいと思うのか？
あんたは、誰よりも俺達と敵対している」
三日月は途端に茫然とする。
「えっ・・」
それ以上の表情はうかがい知れなかった。
それよりも、ぐっと自分を引き寄せた三日月の行動に疑問が浮かぶ。
「主！」
「審神者さま！」
慌ただしく騒ぐ二振りの声を背に受けて、同時に、
「・・・っ！」
肩口にはしった痛みに眉を寄せる。
「・・っう、？」
全身がぞわり、粟立つ。
(何か、からだに、流れ、・・っ！)
「はなせ！」
総毛立つ気持ちの悪さに耐えかねて、三日月を突き飛ばす。
「主！」
突き飛ばした直後、足元がふらつく。
膝をついた体を左文字が支えた。
「おのれ、三日月宗近！」
かっと牙を剥きだした小狐丸が抜刀する。
「・・主に何を、！」
桜夜を抱え込む左文字の視線に、
三日月は驚くでもなく、きょとんとしていた。
「・・・何故、怒る？」
それはあまりに純粋な表情だった。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
