第二十六桂 ： 混乱 ページ29
両手いっぱいの野菜。
それを見る燭台切の目は困惑に揺れていて、
ミハナの眼差しは驚愕に固まっている。
しかし三日月はどうしてだか嬉々としていて、
桜夜がそれを受け取る時を、今か今かと待ち侘びているようだった。
「それは、あなたがミハナと食べればいい」
柔らかさなど微塵もない、感情など僅かにもない、
冷淡で淡白な声だった。
「・・けん、しゅう、」
ぐらぐら、途端に三日月の瞳が揺れる。
「俺は部屋で、左文字さんや小狐丸と食べますから」
向き直り、部屋へと足を向けた時。
失言だったか、と唇を引き結ぶ。
小狐丸、と名前を出したことに関してだった。
しかし思っていたような反応は、
ミハナからも燭台切からもかえってはこず、
桜夜と左文字は、問題なく部屋へと向かう。
――背後で、何かが落ちる音が聞こえた。
ばさり。
それは葉物や茎が、地に落ちる音だった。
＊＊
――――無残なほどあっさりと、
床へと散らばった艶のある野菜たちを見下ろす。
それは僕が彼女のためにこしらえた、ひときわ自信のあるものだった。
「・・三日月さん」
ひとつひとつ、野菜を拾い上げていく。
茫然としていたミハナも、
はっとして膝をついて、集め始めた。
三日月は、未だに動かない。
「・・どうして、彼にこんなことをしてあげようと思ったの」
昼間の態度で、多少はわかったはずだ。
彼ならば、きっと断ると。
「・・・」
動かなかった三日月は、その拳を震わせた。
「・・わからなかったのっ・・？
彼は断るって、君なら予測出来ただろう・・！」
完全にやつあたりだった。
せっかく育てた野菜を刈り取られ、
おまけに勝手な行動で、三日月は野菜を投げだした。
「・・何故だ」
「・・・はっ？」
溢された声に顔をあげる。
彼は震える両手を、揺れる瞳で見下ろしていた。
「俺は、こんなにも、美しいのに、っ・・何故、何故、・・」
言葉の意図をくみ取るのに、時間は要さなかった。
「何故、あ奴は、俺を、見ない・・！？」
「・・三日月さん・・まさか、」
「どうして・・！ ここまで、仕立ててやったのにっ、
何故、俺の言葉に、応えないっ・・・！」
美しく長い指先で髪をかき乱す。
しかし男らしく大きい手を、額へとおしつけて、
三日月は食堂から駆け出した。
「・・三日月さん、君はひょっとして、――」
この日この時
彼を止めていれば
彼らの未来は
変わってくれたのだろうか。
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遊藍 - うろちょろしていたら二桁台にランクインしていたことに気が付きました・・！いつもお世話になっております。みなさま、本当にありがとうございます！ (2015年12月7日 7時) (
レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 闇夜さん» 待ち遠しく、だなんて・・！ありがとうございます。ご満足頂けるような作品に少しでも近づけるよう努力しますね！ありがとうございます！ (2015年11月21日 5時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
闇夜(プロフ) - いつもこの作品の更新を待ちどうしく思っています！これからも頑張ってください！ (2015年11月21日 1時) (レス) id: 728ca8e5ec (このIDを非表示/違反報告)
遊藍 - 蒼さん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます。これからも皆様に気に入っていただけますよう、最善を尽くします。こんな遊藍めの作品ですが、よろしければこれからも、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます！ (2015年10月29日 0時) (レス) id: 1efa798365 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 文章がとても読みやすいうえに、その場の雰囲気や表情も想像できるような作風にすごく惹き込まれました！三日月のラスボス感と主人公の立ち回りを楽しみにしています。 (2015年10月28日 9時) (レス) id: 93399226f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊藍 | 作成日時：2015年9月25日 22時
