求めろ ページ22
2人は手を繋いだまま夜の島を散歩した。
春島の夜風は寒すぎず、逆に丁度良く心地よかった。
夜の街を抜け、夜景を眺めながら海辺へ向かった。
その間、（ナナシ）は口を開いた。
まるで独り言を呟くように…
貴方『私ね。利用される為に生まれて、ずっと死んだ昔の私の為に生きてきた」
「今はそんな理由じゃないけどね」と言って、言葉を続けた。
貴方『「誕生日」という事も旅して、着いた島の子供から聞いたの。
少し、羨ましかった。望まれて生まれた人はこんなに愛されているって感じられる日があるんだって…』
ローは黙って（ナナシ）の言葉に耳を傾けた。
貴方『でもこんな私の人生が、誰かの笑顔とか、救いになれて、「間違いじゃなかった」って思えて、すごく幸せなの』
いつの間にか白い砂浜に着いた。
明るく真っ白な月に碧い海。
夜空の星々が海面に映っていて波と共にキラキラ揺れていた。
その美しさに（ナナシ）は小さく「わぁ」と歓声上げてローの手を解き、海へ向かう。
月明かりに照らされて薄い青色に見える砂浜を裸足で歩く（ナナシ）。
手に脱いだヒールを持ちながら無邪気に歩き、海に足を浸けて「冷たい」とはしゃぐ。
シャチに整えられた髪に、イッカクが選んだ淡い青のワンピース。
美しい夜と海の碧に溶け込んで綺麗だ。
だけど、瞬きをした瞬間そのまま溶け込んで消えてしまいそうなその儚さはなんだとローは思った。
そんな事はないと分かっていながらも消えてしまう前にと思って（ナナシ）の腕を引き、自分の胸に寄せる。
貴方『どうしたの？』
ロー「お前が消えてしまいそうだから」
貴方『どこにも行かないよ。旅は時々するけど、私が帰ってくる場所はここでしょ？』
「ローの隣」と（ナナシ）は囁いた。
ロー「………」
（ナナシ）は自立過ぎている女だ。
何でもうまくこなすし、甘える時は不安な時だけ。
だが（ナナシ）には消えてしまいそうなその儚さが、どうもローの焦燥感を掻き立てる。
実際一度彼女を失った。
そしてそれ以前に（ナナシ）は2度死んでいる。
（ナナシ）が人体実験の失敗による副作用の体質がなければ、彼女は今ここにはいない。
彼女がここにいるのはすべて奇跡なのだ。
貴方『ロー、そんな顔をしないで』
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瑠璃アゲハ(プロフ) - hinaさん» コメントありがとうございます！ヒロインに嫉妬ですか！確かに書いたことがない話ですね！シチュエーション考えてみます！ありがとうございます！ (2020年11月23日 1時) (
レス) id: b1b687d56b (このIDを非表示/違反報告)
hina - 次はももちゃんに嫉妬とかどうですか？ (2020年11月22日 21時) (レス) id: c9859b37ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃アゲハ | 作成日時：2020年10月31日 18時
