273話 過去編 ページ46
No side
貴方『……本当だったんだ…』
あの白衣の男の言葉を信じたくなかったが、これが現実だと男の言葉とデータが示している。
また涙が出る。
自分に両親もいない、故郷もない、ただ現実世界の政府に利用される為だけに生まれ、何も知らずに10年も騙されていた…
データにあった「擬似不老手術」…
失敗しているはずが、自分は今2度蘇っている事に気づく。
不老ではなく、不死手術となったのだ。
全てを失って、何もなくなった自分がこれからどう生きろと？
いっそ死んだ方がよかったとコレルは喪失感に襲われた。
絶望…その言葉がぴったりだった。
気づいたらコレルは外に出た。
覚束ない脚で島を回ってみたが、この島は研究所以外、何もない島だった。
力尽きて地面に倒れて、横たわる。
目を閉じて、またあの世界に帰れると祈って、眠りに付く。
だけど戻らない。
無意味な現実逃避は何日も続けた。
この数日で島は激しい嵐に襲われ、研究所に雷が落ち、燃え続ける研究所を、コレルはただただ見つめた…
自分が今まで存在していた証拠もすべて消え去った。
雨に打たれても地面に横たわるコレルは、ここで死ぬ時を待っていた。
荒れる海に目を向ける。
もう幻術で見た両親の、村の人達の顔も、名前も覚えていない…よく自分に体術を教えてくれた大好きだったあの人も…
でも、あの言葉だけはまだ覚えている…
船を使えば、自分の見たことないものが、海の向こうにあると…
貴方『うぅ…グズっ……』
自分が生み出した幻惑に過ぎない男の言葉なのに、
それでも10年過ごしてきたあの人の言葉を信じたくて、夢を見たくて……
生きたくて………
見える海の向こうに行ってみたいと思い始め、泣き出すコレル。
死にたくないと、心臓が鼓動する度にその思いは強くなった。
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瑠璃アゲハ(プロフ) - 麗さん» 誤字でしたね…訂正しました。指摘ありがとうございます！ (2020年11月21日 13時) (
レス) id: b1b687d56b (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 15ページ やっぱい は誤字ではないでしょうか?? (2020年11月21日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠璃アゲハ | 作成日時：2020年9月21日 16時
