9つの祝福 (ページ9)

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【第8話】裏切り(後編) ページ9

我先にと次々に祝福を奪おうとする彼ら。誰も止まる事なんて無い。

「ちょっと、待ってよ！何で、私から奪おうとするの！？」

隈川「もう、ここまで来たら早い者勝ち、じゃないですか。」

また取られた…【揺蕩う大地】…これで5つ目…。

去り際に中から祝詞を口にする声が聞こえた。次の階では百合野が【雷鳴の囃子】を口ずさむ声が…。

百合野「…貴女のその過ぎた愛を断ち切らなければ永遠に祝福は物に出来ないに気づけば？」

駆け寄ろうとするも扉は目の前で閉まる。

『独リ占メハ許サナイ』

そんな声が聞こえた気がした。

古谷「祝福の力で踊るのは最高だな。」

華麗に舞う彼。【旋風のロンド】…まだ1つもトーチに灯してない…。

瑞沢「お嬢様！」

後ろを振り返ると肩で息をする瑞沢と環の姿が。

「2人共どうしよう…っ、ほとんど取られちゃった…っ皆、変わってしまったの…っ」

涙が溢れて止まらない。あんなに仲良く暮らしてた日々は嘘だったの？

瑞沢「お嬢様、大丈夫ですよ。」
環「祝福はまだ2つ残ってますよ。」

「うん…っ、でも、2人も最初、皆と同じで奪おうとしてたんじゃ…。」

瑞沢が優しく背中を摩ってくれたからか落ち着いてきた。

瑞沢「その、申し訳ございませんでしたっ。いざ祝福を目の前にしたら、全て自分の物にしたいという欲が出てしまいました…。」
環「途中で、これはお嬢様の任務なのに、と気づいたのです。残り2つは一緒に行きましょう。」

なんだ、あれはやっぱり演技だったんだね。まだ少し立ち直れない私を横から2人が支えながら【白銀の園】へ向かう。

環「周りに誰もいないか確認してくるよ…。」
瑞沢「行かせない…っ」

突然、瑞沢が環を押し退けて中に入っていった。

環「瑞沢！何を！」
瑞沢「やっと、手に入った！もうこれで思い残す事ない！」

歓喜の涙を流す彼だったが、それは流れる事なく凍った。

「あぁ、瑞沢まで…っ」

残る祝福は後1つだけ。こんなんで任務が果たせるとは思えないよ…っ

環「お嬢様…行きましょう…。」
「うん…。」

最後の【マグマの胎動】へと辿り着いた。でも、また誰かいるのではと不安になってきた。

「どうしよう…これも、誰かに取られたら…私、任務を果たせない…。」

環「お嬢様はそこで待ってて下さい。私が誰もいないか様子を見てきます。」

指示を受けた私はジッと待つ事にした。

環「……なんてな。バカなお嬢様だ。」

どこか誇らしげに笑った彼は扉の向こうへ行ってしまった。