44.エゴ ページ45
ｶﾗﾝｯ
「いらっしゃ…あ、工藤さん！」
『どうも。今日は午後からお休みなので、来ちゃいました。』
ポアロのドアを開ければ、エプロンを付けて食器を片付けている安室さんがいた。
他の店員さんは買い出しに言っているらしく、他にお客さんはいなかった。
「そうなんですか、お疲れ様です。どうぞお座り下さい。」
『ありがとうございます。』
安室さんに椅子を引かれてカウンター席に座る。
「ココアでよろしいですか？」
『はい、お願いします。』
注文をしてから、特にすることもなく安室さんの姿を眺めていた。
…やっぱり零くんにそっくり。
あれから、私なりに色々調べてみた。
警察組織には身分秘匿捜査というものがあり、その捜査官となった者は身分を偽装して別人として捜査をする事がある。
所謂、スパイ。
安室さんが降谷零だと仮定した場合、警察組織に属するその捜査官などだとしたら色々腑に落ちる。
「僕の顔に何かついてますか？」
『…いえ、何も。』
あくまで私が勝手に立てた仮説だし、仮にその仮説が正しくても私から特にアクションを起こそうとは思わない。
彼は彼の成すべきことをしているだけなのだから。
「どうぞ、ココアです。…そう言えば、工藤さんはお酒好きなんですか？」
『ありがとうございます。そうですね…お酒は好きですよ。』
「そうなんですね。何をよく飲まれます？」
きっとこの前蘭ちゃんにビールの話をしたからだろうか。
出されたココアを口に含んで考える。
『んー…ドイツにいた時はビールがほとんどでしたけど、ドイツのビールに慣れてしまってからは日本のビールだと物足りなく感じてしまって…最近はもっぱらウイスキーですね。』
「まぁ本場ですしね。お酒は強いんですか？以前はザルだと言っていましたが。」
『強い方だと思いますよ？飲み比べしても基本勝ちますし。』
そう言えば安室さんに意外だという表情をされた。
そんなに意外だろうか。
『安室さんもお酒、強そうですね。酔っている姿が想像できません。』
「僕もですよ。一度酔っている姿を見てみたいものです。」
お互いに笑みを浮かべ、視線が交わる。
…安室さんは、掴みどころがない。
零くんとは全然違うけど、私の本能がその「違う」を否定する。
『…私、ある人に聞きたいことがあるんです。』
「聞きたいこと、ですか。」
これは、私のエゴだ。
『…あの約束を、今も覚えていますか？』
「ッ…！」
その言葉に、彼の目が僅かに見開かれた。
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YuasA(プロフ) - †NANA†さん» ご指摘ありがとうございます。先程訂正いたしました！ (2022年1月7日 16時) (
レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ24で、「電話したもんだな」が「電話わしたもんだな」になっています。 (2022年1月7日 15時) (レス) @page24 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：YuasA | 作成日時：2022年1月1日 23時
