28.救命 ページ29
ストレッチャーで点滴されながら病棟に運ばれた患者さんを見送り、看護師さんに今後の対応について話していた。
「よっ工藤。」
『佐伯先生!?』
今までオペに入っていた先輩医師、佐伯尚美先生。
たった今オペが終わったのか、手術着のまま救命を訪れた佐伯先生に思考が止まる。
その時、不安に駆られた。
さっきの自分の対応は正しかったのか、間違ってはないか、と。
それが顔に出ていたのか、佐伯先生は困ったように笑って私の肩に手を置いた。
「そんな顔するもんじゃないよ。工藤の判断は正しかった。事故の影響で極端に張りが強くなった故の破水。ウテメリン点滴での様子見……私が来ていても同じ判断をしてたと思うよ。無理に内診をしていれば、完全破水する可能性もあったし。あれで留めたのは賢明な判断よ。」
『っありがとうございます!』
よかった、間違っていなかった…。
どっと来た安堵と安心感に、ふぅと息を吐き出す。
『…でも、やっぱ救命は緊張します……』
「まぁ救命は他科より時間倍速で進んでるようなもんだからねぇ」
そんな会話をしながら処置室を出る。
「あっあの!!先程の妊婦さんは…?」
処置室を出た時、すぐに立ち上がって私の元へ話しかけてきたのはずっと処置室前の椅子にいた男性。
『あ、彼女なら今は病棟に移されて点滴されていますよ。…えっと、事故の関係者さんですか…?』
「いえ、自分は警察の者です。事故自体はすぐに収束したのですが、急に彼女が腹痛を訴えられて…車両も戻った後でしたので救急車を。」
なるほど、そう言うことか。
『差し支えなければ、事故の内容を伺っても?患者さんの容態に影響がないか確認したいので。』
「…分かりました。」
その時、一瞬だが刑事さんの表情が戸惑いのものになった。
もしかして、あまり外で話せない内容なのか。
『…こちらへ。』
佐伯先生にアイコンタクトを送れば、理解した佐伯先生は「工藤はそれが終わったら上がって大丈夫よ」と言った。
…さすが産婦人科のエースだ。
私は事故の内容を確認する為、刑事さんを防音設備のある個室へ連れて行った。
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YuasA(プロフ) - †NANA†さん» ご指摘ありがとうございます。先程訂正いたしました! (2022年1月7日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ24で、「電話したもんだな」が「電話わしたもんだな」になっています。 (2022年1月7日 15時) (レス) @page24 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月1日 23時