21.ウェディングイブ ページ22
「靴なんて履き替える必要ありませんよ。歩き続けて止まらなければ、どんな靴かなんて判別できませんし。実際、彼の靴はどこにでも売ってそうなスニーカーですしね。」
安室さんの言葉に、私は思わず目を細める。
やはり彼は気付いていない。この証拠に。
「じゃあ伴場、脱いで見せてやれ。お前のスニーカーの裏側を。それはお前が……犯人ではないという証拠だよ。」
小五郎さんの言う通りに伴場さんはスニーカーを脱いで底を見せる。
そこには茶色いクリームが付着している。
「あ、それチョコレートケーキだと思います。伴場さん、床に落ちたケーキ踏んでましたから。」
『伴場さんがそれを踏んだのは、初音さんがネイルサロンに向かう前の事。もし伴場さんが犯人だとして、雨の降る中を走ればこんなクリームはほとんど落ちてしまっていますよ。』
加えて小五郎さんがそれが事前に伴場さんが用意した証拠ではなく、彼の無実を証明する物的証拠だと説明する。
『それに、伴場さんの手の傷を治療した時に患部を診ましたが、あれは明らかにガラスによる切り傷でした。引っ掻かれた傷なら、もっと傷口の幅が広いはずです。』
まだまだ医者として未熟な部分はあるが、切り傷と引っ掻き傷を見間違えるほど素人ではない。
それに対し、安室さんはDNAの疑問について追求する。
「DNAは!?彼女の付け爪の先に、彼のDNAとほぼ一致した皮膚が付いていたんですよ!?彼がその時、彼女のそばに居たって証拠じゃないですか!?」
「付け爪に付いていたのが、彼女本人の皮膚だったって場合は考えねぇのかよ。」
「なっ、何を言ってんですか!さっきも言いましたが、血縁者でない限り、遺伝子情報のほぼ一致はまず有り得ません!現在同じ型のDNAの別人が現れる確率は、4兆7000億人に1人とされていますし。第一、女性には男性だけが持っているY染色体がないから、すぐにわかりますよ!」
「問題のその皮膚が雨や泥で汚染され、性別の部分が不明だからほぼって言ってるのかもしれねぇだろ。」
「だ、だとしても、そんな2人が偶然出会い、たまたま恋に落ちて結婚しようとしたって言うんですか!?」
小五郎さんへの最後の追求に、とうとう彼は確信的な答えを放つ。
「出会ったのは偶然かもしれねぇが、惹かれあったのは必然だと思うぜ。……2人は双子だったんだからな。」
「「「!?!?」」」
雨の音が強くなる。
窓ガラスに当たる雨の音が店内に響く。
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YuasA(プロフ) - †NANA†さん» ご指摘ありがとうございます。先程訂正いたしました! (2022年1月7日 16時) (レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ24で、「電話したもんだな」が「電話わしたもんだな」になっています。 (2022年1月7日 15時) (レス) @page24 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YuasA | 作成日時:2022年1月1日 23時