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▽ 後編 ページ45







 花園さんに一言何かを言うと、景くんは私達の元にやって来た。折角気になっている子と話していたのに、花園さんはもう良いのだろうか。

 もしかしたら邪魔をしてしまったかもしれない、と申し訳なくなっていると、景くんが首を傾げて問い掛けてくる。




「 心配して来てくれたのか? 」
「 うん。でも取り越し苦労だったみたい 」



 苦笑いを零す私に、景くんはそれを否定するように首を振った。すると、隣に立つ零くんが沈黙したまま顔を俯かせていることに気付く。

 不思議そうに首を捻った景くんが零くんの顔を覗き込もうとすると、それよりも先に零くんが顔を上げた。




「 景。……付き合うつもりなのか? 」
「 えっ……! 」



 零くんの一言に判り易く頰を染めた景くんが、途端に視線を彷徨かせて困った表情を作る。

 それとは裏腹に零くんの表情は真剣味を帯びており、けれどそこからは隠し切れない不満が伝わってきた。


 景くんの恋を応援したいとは思っているが、だからと言って景くんが離れていくのは看過出来ないのだろう。

 景くんは困ったように眉を下げると口を開く。




「 実は、よく判らないんだ。……好き、ではあるんだけど…… 」



 羞恥心に耳まで紅くさせ、語尾につれて声は段々と小さくなっていく。仄かな熱を帯びて揺らめく瞳は穏やかな灯火を宿し、春の小川のように凪いでいる。

 顔を俯かせてしまった景くんは、まさしく純情であった。



 とはいえ、ここは廊下である。
 ある種の誤解を生みそうなこの現状をどう捉えるかは別として、思春期の学生で溢れ返るこの公の場所でこういう会話をするのはまずい。

 二人共校内ではそれなりに有名人だから、変な噂が立ち兼ねない。



 それにそろそろ次の授業が始まる時間帯だ。

 一旦撤収しようという合図を込めて零くんの肩に手を置けば、それをすぐに察した零くんが少し不服そうな顔で頷いた。

 眉を垂れ下げている景くんは苦笑を浮かべるとまた後でな、と残して自身の教室に戻っていく。その背中を見送りながら、私は内心悩ましげに首を捻った。





 こういう擦れ違いはまさに今時の青春漫画のような展開だ。

 そんな少し場違いなことを考えながらも、私は二人にとって中立な立場である為に何方か一方に着くことは出来ないこの立ち位置について唸る他ない。






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スピカの街(プロフ) - 休校さん» コメント有難う御座います。前作品でもコメントして頂いたのでまさか二回もコメントして頂けるとは思わず、本当に嬉しいです。そんな風に言って下さって有難う御座います。書いてる此方側としてはすごく励みになります。誠心誠意頑張らせて頂きます (2020年8月20日 2時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)
休校 - 続編おめでとうございます!やっぱり、どこまで見ても飽きないですね………!語彙力分けて欲しいです笑 更新頑張ってください! (2020年8月20日 1時) (レス) id: 45889617ce (このIDを非表示/違反報告)
スピカの街(プロフ) - ゆさん» コメント有難う御座います。そんな風に感動して貰えるとは思っていなかったのでとても嬉しいです。作者としても文才には力を入れており、言葉回しにも気を遣って丁寧に執筆しているのでとても光栄です。本当に有難う御座います。ご期待に添えるよう、頑張らせて頂きます (2020年8月13日 9時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初めまして。あまりにも綺麗で素敵な作品でしたので、どうしてもこの気持ちをお伝えしたく、コメントせていただきました。表現の仕方や言葉の選び方 本当に本当に素敵で感動しました。そして素晴らしいセンスを感じました。これからも楽しみにしています。失礼しました. (2020年8月13日 1時) (レス) id: 7456c356b5 (このIDを非表示/違反報告)
スピカの街(プロフ) - 桜さん» コメント有難う御座います。そんな風に思って頂けるなんてとても光栄です。すごく励みになります。本当に有難う御座います。少しでもご期待に添えるよう、頑張らせて頂きます (2020年8月13日 0時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スピカの街 | 作成日時:2020年8月12日 22時

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