中学校奇譚-後編- ページ39
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「 実は俺さ、気になる子が出来たんだ…… 」
仄かに頰を染めて放たれた言葉に、私と零くんは呆けた顔で景くんの顔を凝視した。
依然として恥ずかしそうにしている景くんに嘘はなく、だからと言って盲目さは感じない。
恋というにはまだ薄く、確かに芽生えた小さな蕾は穏やかに揺れている。そんな木漏れ日のような瞳をした景くんの目はとても澄んだ蒼であった。
もう直ぐ冬入りだというにも関わらず、突然舞い込んできた情報は私達の好奇心を揺らすには十分である。
静まり返った放課後の教室は、いつもより色褪せているような錯覚を起こさせた。
「 え、誰? 」
反射的に詰め寄った私と零くんの気迫に、景くんは若干引き気味に身体を反らせて視線を泳がせる。
未だ照れ臭そうに色付く頰の赤みは初々しさを醸し出しており、もしかしたらこれが景くんにとっての初恋になるのかもしれない、なんてことを思う。
確かに中学二年生と言えば、色恋沙汰に興味が出始める時期だ。所謂この思春期の時期で、景くんに気になる子が出来るというのは必須でもある。
それは見ているこっち側としては微笑ましくなるような、そんな純情さを感じさせた。それはきっと中学生だからこそ感じるものでもあるのだろう。
まさに景くんにも春が来た、というやつである。
「 同じクラスの、花園さんって子なんだけど…… 」
「 あ、花園美月ちゃん?あの子可愛いよね。雰囲気が女の子らしいし、控えめで女子力高いし、朗らかで気遣い上手って感じ 」
「 ……他クラスなのによく知ってるな? 」
「 うん。可愛い女の子は大抵憶えてる 」
「 何かその言い方今時のチャラ男みたいだ 」
二人にツッコミを入れられながらも、頭の中に思い浮かぶのは四組の花園美月ちゃんのことであった。
と言うのも、彼女は結構有名だ。実際モテるし、髪や肌にも気を遣っているからか清潔感溢れる可愛らしい子である。
まるで少年漫画に出てくるヒロインのようだ、と初めて見た時はそんな印象を抱いた。
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スピカの街(プロフ) - 休校さん» コメント有難う御座います。前作品でもコメントして頂いたのでまさか二回もコメントして頂けるとは思わず、本当に嬉しいです。そんな風に言って下さって有難う御座います。書いてる此方側としてはすごく励みになります。誠心誠意頑張らせて頂きます (2020年8月20日 2時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)
休校 - 続編おめでとうございます!やっぱり、どこまで見ても飽きないですね………!語彙力分けて欲しいです笑 更新頑張ってください! (2020年8月20日 1時) (レス) id: 45889617ce (このIDを非表示/違反報告)
スピカの街(プロフ) - ゆさん» コメント有難う御座います。そんな風に感動して貰えるとは思っていなかったのでとても嬉しいです。作者としても文才には力を入れており、言葉回しにも気を遣って丁寧に執筆しているのでとても光栄です。本当に有難う御座います。ご期待に添えるよう、頑張らせて頂きます (2020年8月13日 9時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - 初めまして。あまりにも綺麗で素敵な作品でしたので、どうしてもこの気持ちをお伝えしたく、コメントせていただきました。表現の仕方や言葉の選び方 本当に本当に素敵で感動しました。そして素晴らしいセンスを感じました。これからも楽しみにしています。失礼しました. (2020年8月13日 1時) (レス) id: 7456c356b5 (このIDを非表示/違反報告)
スピカの街(プロフ) - 桜さん» コメント有難う御座います。そんな風に思って頂けるなんてとても光栄です。すごく励みになります。本当に有難う御座います。少しでもご期待に添えるよう、頑張らせて頂きます (2020年8月13日 0時) (レス) id: e9553c123a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スピカの街 | 作成日時:2020年8月12日 22時