１４４話目 ページ44
出水side
迅さんの胸ぐらを掴む手が震える
腹の底からグルグルとしたものが溢れる
なんで庇う未来がAだったんだよ
なんで…
出水「なんで…なんでAをメガネの盾にしたんだよ！！なんでっ…止めなかったんだよ！！」
迅「…俺は…Aちゃんの優しさに甘えた、だからメガネくんを守るって言ったAちゃんを止めなかった。命の天秤をかけて…俺はメガネくんを選んだ」
出水「んな事知るかよ！！メガネのために犠牲になるのが何で俺の大切な人なんだよ！！喧嘩する未来も見えてたんだろ本当は…それを利用したんだろ！！ふざけんな！！未来なんて見えても役に立たねぇじゃん！！」
太刀川「出水！！」
出水「！！…っ……俺今日は帰ります…」
米屋「出水っ！！」
太刀川さんの声にハッとして止まる
迅さんは酷く優しく笑っていて
ここに居られなくて走り出す
家に戻って部屋に閉じこもる
出水「っ…はっ…ぅ…クソッ…Aっ…」
ボロボロと涙が零れて嗚咽が漏れる
隣に居ない体温、匂いを求めてシーツを掴む
だけど温もりも匂いもなくて
ただ冷たいシーツに俺の涙が染みていく
ピコン＿
出水「っ…だれ…」
画面を開けば米屋からだった
――――――
米屋明日さ、学校当分休むって伝えとくから、Aちゃんの様子とか見に行って来いよ。…役に立てなくてごめん
出水サンキュ。米屋が謝ることじゃない、俺が…あの時あんな事言って傷つけて一人にしたせいだ…迅さんにだってあんなのただの八つ当たりだ…迅さんだって…見たくてみてるわけじゃないのに…
米屋また、俺らもお見舞い行くからさ、お前だけは笑ってろ。出水が笑ってなかったら、Aちゃんが起きた時悲しむだろ
出水…ありがとう
米屋おう
――――――
画面を閉じて枕に顔を埋める
止めようと拭っても止まらない涙は放置して
グッと唇を噛む
出水「っ…笑えるかよ…ﾂ…」
時間を戻せるなら、喧嘩する前に戻れるなら
この手でちゃんと掴んで一人にしないから
抱きしめて離さないって違うから
出水「早く…帰ってこいバカAっ…」
そんな俺の声は
誰にも届かず静かな部屋に消えた
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作者名：Yu-grena | 作成日時：2021年3月25日 14時
