オクルモノ2 ページ42
日差しが私たちを少しずつ照らしていく。完全に照らされた瞬間、ハツは嬉しそうに声を漏らした。
「うわぁ……なつか、しい……！あった、かいっ……！でもっ……、ちょっと、まぶ、しい……なぁ……。」
彼は私の肩に顔をうずめる。肩口には少しずつ濡れて冷たくなる感覚があった。彼は、私と太陽を見れたことで涙を流したのだ。
太古の遺跡が崩壊するように。心を守るために築かれた感情の防壁は、一瞬で崩れ去ってしまう。
「……ううっ、は……っ、あぁっ……！あああ……！！みれて、うれしい、のに……！もっ、と、いっしょ……に、みたい、のに……！居たい、痛い、い、たい、よ……。」
「くび、いたい……！ここ……ろ、ずきずき、する……。よな、よなねえちゃん……！いのは、にいちゃん……！いたい……っいたい、よぉ……！あいたい、よ……！」
太陽の下、再会した仲間が終わりの時を感じて泣き出している。きっと泣くことだって辛いだろうに、彼は泣き続けて私に想いを伝えてくれている。
思いは伝播し、広がる。私の心に落とされた彼の涙が比較的穏やかだった水面に波紋を広げた。コップの縁、小さな波がゆらゆらと溢れかけている。少しでも衝撃を加えてしまえば、
「痛いね、私も一緒に居たいよ……！ごめん、もっと早く、助けられれば良かった……！私が、もっと強ければ……！」
「よな、ねえちゃん……。」
「なか、ないで。」
波がこぼれていた。瞳から雫が流れ、彼の顔を濡らしていく。雫の成分は、悲しみと怒りと後悔。口元に流れ着いた雫はしょっぱいはずなのに苦かった。後悔の味だろうか。
「無理、だよっ……！だって、私はっ……！暖かくて、少し寂しい場所で、のうのうとしてて……！ハツは傷ついて……！なにが、なにが……！」
あぁ、ハツは特別な時は姉と呼んでいた。怖い時、凄く嬉しい時。これはきっと、最期の時。肩から顔を離し私を見上げる。目と目が合う。今この世界には、大人に傷つけられた子ども2人だけ。
「ぼく、よなの……よな、おねえちゃん、の……ほのお、が、あったか……く、て……すごく、すき、なんだ。」
2人だけ、なら。
「ねえ、ぼく……のこと、みん、なの……まつとこ、に……よな、おねえち、ゃんの……ほのおで、おくって、ほしい……。」
禁忌を犯してしまっても、許されるだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ジャコ(プロフ) - ありがとうございます！実は啓吾兄さんの話に関してはお兄ちゃんしてるけど心に秘めるは……っていう展開が好きなのでその1億点が大変嬉しいものです(˶' ᵕ ' ˶) (2022年10月30日 18時) (
レス) id: 4409a0c551 (このIDを非表示/違反報告)
桃華 - お話やキャラ設定、面白くて続きが気になります！👀私的に、ホークスのことを啓悟兄さん呼びなのが1億点です（笑） (2022年10月30日 14時) (レス) @page36 id: cf0912901f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ジャコ | 作成日時：2022年6月30日 0時
