オクルモノ1 ページ41
腕の中、ボロボロになったハツは私をじっと見つめる。その目からは幾つも涙が流れていて止まるところを知らない。
「怖いことしちゃって……ごめんね……！もう、大丈夫だよ。今から治療を……！」
まだ助かるかもしれない。早く外の世界を見せたい、色々話したい、手を繋ぎたい、走り回りたい、クラスメイトを紹介したい。沢山の希望と願望を込めて、私は彼に緑の炎を纏わせた。
「違……う、」
しかし、彼はそれを止める。それと同時に、私は恐ろしいことに気がついてしまった。
「……っ、なんで！？何で、心臓が……心臓が、ない、の？！」
怪我の程度を知るため炎で体内を探るも、血液が流れる様子もなかった。何かがおかしいと思い、原因を探そうと血管を辿らせた先。あったのは、空白の心臓だった。
「ぼ、く……もう、死んで、るんだ。」
ポツリと伝えられた、衝撃の事実。声を上げかけたが、彼が話したそうに口を開けていたのを見て、ぐっと飲み込んだ。彼は私の頬に手を添える。手は、冷たい。
「……ヒーロー、が……来た時に、ね？ぼく、ますたーに、ころされ、たの。くびわ、なにもして、ないのに、じじっ、て。」
「そこ、の……きいろい、ヒーロー……が、さいご、に褒めてくれたの、覚えてる。」
そこの黄色いヒーロー。周囲を見渡して視界に入ったのは、オールマイトが萎んだような姿の男。服が同じであることから本人で間違いないだろう。私はその事に触れず、腕の中に意識を戻した。
「よな、あのね。ぼく、かんりしゃ、の、こせい、で……動いて、たの。」
「……。」
「そのこせい、〈命令〉、で……切られた、から……。ぼく、もとに、もどっちゃう。だから、おねがい、」
「……うん、なんでも聞くよ。」
「ぼく、よなと、いのは、とね、いっしょに……ひを、たいようを、みるのが……ゆめなんだ。……いのは、いないけど、おねがい。」
掠れて薄くなっていく声が、私の鼓膜を揺らす。彼の顔は、2人の水で濡れていた。しかし彼の涙は枯れつつある。枯れ果てる前に、どうか。ささやかな彼のおねがいを叶えるべく、私は翼を広げてUSJ出口へと向かった。
「あっ！夜桜少女待ちな……！！」
「夜桜！」
私の名を呼ぶ声には聞こえないふりをして。私は鉄の扉をくぐり抜け、陽の光を浴びた。ハツと一緒に。仲間と、共に。
……彼の心臓が中で動いていれば、望んだ未来だったのにな。
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ジャコ(プロフ) - ありがとうございます！実は啓吾兄さんの話に関してはお兄ちゃんしてるけど心に秘めるは……っていう展開が好きなのでその1億点が大変嬉しいものです(˶' ᵕ ' ˶) (2022年10月30日 18時) (
レス) id: 4409a0c551 (このIDを非表示/違反報告)
桃華 - お話やキャラ設定、面白くて続きが気になります！👀私的に、ホークスのことを啓悟兄さん呼びなのが1億点です（笑） (2022年10月30日 14時) (レス) @page36 id: cf0912901f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ジャコ | 作成日時：2022年6月30日 0時
