冷たくなってしまった君へ1 ページ15
〘A side〙
渡された本を読んでいく。
そこには、人を気絶させる描写はあれど、命を断ち切る描写はなかった。キズはあれど、笑顔があった。
思い出すのは、和やかだった暖かい思い出。
はしゃぎまわって傷だらけになって、笑いながら手をつないで帰ったっけ。
古ぼけたフィルムを見ているかのようにぼんやりと情景が流れ出す。この時、研究所に来る前の事を久々に思い出したことに気がついた。
「『フェニックスは光に包まれながら、仲間は暖かい炎に包まれながら。人の形に代わったフェニックスは仲間と額を合わせ、笑いあいました。
いつでも見守っている、またどこかで会おうね。
そう伝えると大きな翼で夕日に向かって飛び立ちました。』」
額を合わせて笑いあう挿絵で物語は閉じられている。
裏表紙に描かれていたのは夕方と夜の境界。フェニックスがこれから辿る世界を描いているようで、感嘆の声が漏れた。
「ね？いい本だったでしょ？」
「そうだね。
……なんだか懐かしいことを思い出せた気がする。」
「そうだろうと思ったよ。泣いてる。」
E-0813に言われて頬を触る。
そこには生暖かい水の感覚があった。どうして、泣いているんだろう。
「ずっと、ずっと。マスターか管理者を消すことだけを考えてただろ？復讐することだけを考えて、悪の力に手を伸ばし続ける。
……視野が狭くなって大切なことを忘れちゃったんだ。」
E-0813は私の涙を拭う。姿見は同い年ぐらいなのに、どうしてこんなに違うんだろう。水系個性を持つ彼の手は冷たいはずなのに、すっごくあったかく感じる。
「この地獄みたいな世界で生き残るには、互いに体も心も支えあって一日でも長く生き残ることが大切なんだよ。
でも、明日には誰かがいなくなる生活で、この事に気がつくのは僅かなんだ。」
「なあ、S-0473。力を貸して。
このままだと実験成功者は全員敵になって使い古される。俺は、そんな人生を送るために生まれたわけじゃない。」
「いつか、全員でこの施設を出るんだよ。そのためには協力が不可欠。誰かが誰かの為に力を使える状態にしなきゃならない。」
この力でいつも考えるのは、真っ黒で真っ赤なことだらけ。でも、彼の提案なら私はみんなを救うことができる。
お母さんとお父さんからもらった、正しい使い方に戻れるなら。
「…君の夢を、私の夢にさせて。」
「うん。これから、頑張ろう。」
冷たくなってしまった君へ。
一緒に体温を分け合って生きていこう。
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ジャコ(プロフ) - ぬうさん» 返信遅れてごめんなさい！こちらこそありがとうございます！待ってくれている人がいると思うと頑張れます……！ (8月8日 14時) (
レス) id: 245b9733ce (このIDを非表示/違反報告)
ぬう(プロフ) - 公開ありがとうです() (8月4日 2時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
ジャコ(プロフ) - 質問ありがとうございます。続編のパスワードは一時的につけているものです！そろそろ公開する予定なので、ご安心ください！ (2022年7月5日 17時) (レス) id: 4409a0c551 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 質問失礼します！続編のパスワードについて公開してるけど鍵をしているのか全て終わった後まとめて公開などで鍵をしてるいるのか知りたいです！もし前者の場合教えてもらうことは可能でしょうか？更新頑張って下さい！応援してます！ (2022年7月5日 16時) (レス) @page50 id: ee1511a796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ジャコ | 作成日時：2021年10月8日 18時
