ほんの少しの1 ページ12
話を戻すと、自分の事で手一杯なここでは誰かが干渉するなんてことはあまりない。
だからこそ、唐突に話しかけてきた彼には驚いた。
「……君、誰？
向かいの牢の子だよね。」
「分かってんじゃん。俺は【E-0813】。
君より5ランクくらい下、水系個性を持ってる。あ、あんたの事は知ってるから自己紹介はしなくてもいいよ。」
なぜ、知っているのだろう。
私たちの牢に番号が振ってあるわけでもない。
首輪に番号は書いてあるけれど、基本私の長髪で隠れている番号を読み取るのは困難だろう。
「マスターが時々惚気に来るんだよ。あんたはマスターお気に入りの最高傑作。
炎を変幻自在に操る姿なんて神々しいほどだーって。
疲れてんのに毎度毎度うるせぇほど言ってきやがるから覚えちまった。」
「…なんか、ごめんね。」
「気にすんな、お前のせいじゃねぇ。」
知らないところでマスターは私のタグをばらまいていたようだ。先程、微量な私情のストレスも猛毒と話していたこともあって罪悪感が尋常ではない。
E-0813はそんな私の素振りを気にすることなく話し始めた。論点がずれていたことの若干の怒りを混ぜながら、私の心に忍び寄る。なぜ、そんな苦しい生き方をする。
「………………。
ここにきてから、たくさんのものを失った。」
あの葛藤を一つ一つひも解いて話せば、E-0813は顔を歪めた。それでも話は一切遮られず、終わるまで相槌を打ってくれて。すべてを話し終われば
「あんた、馬鹿？」
あまりにストレートな言葉を告げられた。
どこからそんな感想が出るかと聞こうとしたが彼の顔を見れば泣きそうな顔をしていた。
「もういない両親に縋って、嫌がりながら痛みを受け入れて。それを見た両親は、どう思うだろうね。知ってっか？あいつがしていることは罪。お前がしようとしているそれも、立派な罪さ。」
罪。ツミ。つみ。
知らないよ、そんなこと。ここでは法律なんて滅んでしまった。人が人でいられないここは、関係ないだろう？
「…通常、2つ以上体に個性が定着すれば人型を保っていられない。意識を保っていられない。生きていられない。
それでもなお生き続けている私は、
死人に法など関係ないさ。」
話は終わりだよ。そう示すように本に顔を戻す。
開いていたページには、炎の箱に閉じ込められた道化師の絵が描かれていた。
その仮面は、涙を流しながら笑っている。
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ジャコ(プロフ) - ぬうさん» 返信遅れてごめんなさい！こちらこそありがとうございます！待ってくれている人がいると思うと頑張れます……！ (8月8日 14時) (
レス) id: 245b9733ce (このIDを非表示/違反報告)
ぬう(プロフ) - 公開ありがとうです() (8月4日 2時) (レス) id: 1d36f8c737 (このIDを非表示/違反報告)
ジャコ(プロフ) - 質問ありがとうございます。続編のパスワードは一時的につけているものです！そろそろ公開する予定なので、ご安心ください！ (2022年7月5日 17時) (レス) id: 4409a0c551 (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - 質問失礼します！続編のパスワードについて公開してるけど鍵をしているのか全て終わった後まとめて公開などで鍵をしてるいるのか知りたいです！もし前者の場合教えてもらうことは可能でしょうか？更新頑張って下さい！応援してます！ (2022年7月5日 16時) (レス) @page50 id: ee1511a796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ジャコ | 作成日時：2021年10月8日 18時
