私が聞きたかったのは ページ10
そのまま新一の家で午後を過ごした
夕食もそのまま私が作った
ちょっと夫婦みたいで、蘭には悪いけど優越感があった
園子は蘭を“通い妻”って言うけれど
“通う”より“居る”方がそれっぽくない?
だなんて腹黒いこと思ったりして
推理小説の世界に浸る新一
同じソファーに腰掛けて
隣に座って
なんて幸せ
センチメンタルに浸っていたとき
「そーいやあ、お前、そろそろ帰んねえと危なくね?っつっても家、目の前だけどよ」
心配だしな、米花町
そう言って横目で見てくる
タイムアップかな
『そうだね、もう21:00だし帰るよ
ありがと』
立ち上がると、机に本を置いて見送りに来てくれる
「あ、最後に一瞬、話聞いくれよ!
昨日、帰り道に蘭がよぉ…」
突如、嬉々として話し出す
…愚痴を言ってるつもりだろうけど、ただの惚気だってこと気づいてんのかな
適当に聞き流して家を出る
後ろを振り返れば、私が家に入るまで見ているつもりか、新一と目が合う
“み、て、る、か、ら、だ、い、じょ、う、ぶ”
…あーもう
手を振ってドアを閉めた
薄暗い玄関で一人蹲る
私が聞きたかったのは
好きな人の愚痴と称した惚気話じゃない
私を気にかけて家に返してくれるのは嬉しいけど
それも別に求めていない
切った髪、気づいてんのかな
気づいてないよね、きっと
綺麗に揃った髪を摘み、グシャリと崩す
似合ってる、って言ってほしかったなぁ…
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作者名:夜桜 奏 | 作成日時:2019年11月2日 7時