おわりまで はち ページ8
必ずどうにかしてみせる、とは言ったものの。思うように行動できない日々が続いていた。あの上司のことである、なにかしらの考えがあり動いていることには違いないのだが、あの行動はあの子のことを考えてなのかもしれないと気がついてしまったのだ。もしそうだとしたのなら、今更俺から何か言ってもそれはもう手遅れに違いないだろう。
「手遅れ…か」
俺は思うに降谷零という人は、本当に頑固な人である。人にはなにも言わずに自分で抱え込んでは自分で判断を下し、決めた事は絶対に貫き通す。自分の中に自分なりの正義が仮定してあって、それに反する事は絶対にしない。とにかく面倒臭い人である。何のために自分がいるのか、何のために丸山さんがいるのか。てんで理解していない気がしてしょうがない。
「風見?」
「ま、るやまさん」
「どうかした?考え込んでるみたいだから」
ふるふると頭を振って、目を泳がせる。流石降谷さんの同期と言ったところで、丸山さんは人の変化に人一倍敏感である。なんて言ったらいいだろうか、と言葉を探しているときにぱしりと目があった。正確には合わせられたと言うべきだろうか。
「降谷、のこと?」
「えっ、なんで」
「私も悩んでる、あいつ頑固だから」
同じ結末に至っていることについて驚いてしまい、丸山さんの横顔をじっと眺めた。ふいとこちらに目を向けると、少しだけ泣きそうな顔をしてどうしようと弱々しい声で、小さく言葉を紡いだ。
「あいつだって誰かのかけがえない
存在になってるって事
知らないから、知ろうとしないから」
どうしたらいいんだろう。再度溢れた言葉に、深く頷いた。分かりゃしないのかもしれないあの人は。分かってても分かろうとはしないのかもしれない。あの人は俺たちとは違って、深いところにいるから。自分で抱え込みすぎるから。人と触れ合う事をしないようにするから。今までどうにかしようと思ってた事、あの子は全部取っ払って降谷さんに触れていたのに。降谷さんだって、恐る恐る手を伸ばしてたくせに。
「馬鹿ですよ、本当に」
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作者名:えだまめ | 作成日時:2019年10月30日 17時