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おわりまで ご ページ5

「避けてる」

「そうだよ」

「なんで」

「デジャブだ」


とんとんと話は続いたのに、理由を聞いた途端安室さんは口を閉ざした。先ほどまで軽はずみに言葉を放っていたとは到底思えない口の固さに俺は疑惑の目を向け続ける。予想だけれど、一応言ってみて悪い事はない。と思いすっと息を吸い込んだ。


「前のこと、気にしてるんだ」


ぽんと放った言葉に手元に視線を落としていた安室さんは、すっと顔を上げて思いがけない言葉を放った。


「そうだよ」


先ほどまで閉ざされていた口が呆気なく開いたもので俺は目を丸く見開いた。それからにまりと思わず笑ってしまう。見上げた安室さんの顔は暴いてほしい、そんな顔をして居ることに気がついてしまったから。


「素直だね、今日の安室さん
 Aちゃんにもそれくらい素直に
 対応できたら良いのにね」

「からかってる?」

「ちょっとだけ」


口に運ぶ気になれなかったレモンパイを一口頬張りながらくすりと笑った安室さんを盗み見た。素直に見えないくせに素直で、クールに見えてどこまでも熱くて。そんなあんただから、彼女も俺も信じられるのに。解ってくれれば良いのに、早く。


「気にすること無いと思うけど」

「お気楽だね、名探偵さんは」

「お気楽じゃ無いよ、そう思うから」


小さく十二分お気楽だと思うけど、と漏らした後安室さんはわざとっぽくしまったと口を塞いだ。少し睨むようにして、それから表情をやわらく崩した。頑固なあんたが早く自分の幸せを願えるようになるといいな、そして早く周りの気持ちに気がつければいいな。と願うなんて柄にも無いことをした。


「安室さんは解ってると思ってたのに」

「なんのこと」

「なんでも無いよ」


からんと来客を告げるベル、ころりと声音を変えた安室さんの声を聞きながら俺はレモンパイを口に運んだ。

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作者名:えだまめ | 作成日時:2019年10月30日 17時

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