もしものふたり【幼女になって読む話】 (ページ4)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:16,849 hit

おわりまで　よんページ4

「なんで」

「デジャブだ」

カウンター越しにこちらを見上げるコナンくんに頬を引きつらせながら、はぁと息を大きく吐く。コナンくんの咎めるような視線はいまだに刺さってきて抜けるような気配は微塵もない。

「前のこと、気にしてるんだ」

「そうだよ」

図星だったので、その通りに言葉を返せばコナンくんは大きな瞳をぱちくりと音がしそうなほど見開かせて意外そうににまりと笑った。

「素直だね、今日の安室さん
　Aちゃんにもそれくらい素直に
　対応できたら良いのにね」

「からかってる？」

「ちょっとだけ」

素直に、ね。コナンくんの言葉を脳内でくるりと繰り返す。コナンくんは先ほどまで口を付けようとしなかったレモンパイを一口頬張った。もごもごとそれを咀嚼しながら、お行儀が悪いコナンくんは続けて言葉を溢す。

「気にすること無いと思うけど」

「お気楽だね、名探偵さんは」

「お気楽じゃ無いよ、そう思うから」

十二分お気楽だと思うけど、小さく漏らしてからしまったというように口を塞いだ。機嫌が悪そうに、でも少し悲しげな顔をしてコナンくんは微笑んだ。

「安室さんは解ってると思ってたのに」

「なんのこと？」

なんでも無いよ、と血色の良い唇がそう言葉をなぞった。続けて訊こうとしたものの、からんとドアベルが鳴り響き、二人の空間の終わりを告げる。

「いらっしゃいませ」