ゆめなんかじゃない。 ページ15
「おかあさん、おはよう…」
「うん、おはよう」
ゆめだったのかもしれない。あむろおにいさんはわたしが目を覚ましたときにはもう、いなくなってしまっていた。きのうのよるにとどいたポアロへのしょうたいじょうも消えてしまっていて、少し不安になる。そのままリビングにかおをだしたら、朝ごはんをつくり終えたらしいおかあさんはこっちをみて少しだけ笑ってから、わたしをイスに座らせた。
「安室さんだっけ、きのうね
眠っちゃったAの事連れて来てくれて
それで、これ渡して欲しいって」
ゆめじゃなかった。ゆめなんかじゃない。そう思うと、またなみだがこぼれそうになった。おかあさんが、わたしの手のひらに小さなかわいいふくろをおいた。
「あけていい…?」
「もちろん」
かさかさと折りこまれたところを開けていくと、中からきれいなお花のかみかざりが出てきた。あざやかなきいろは、どこかで見たことがある。
「みむらす…おにいさんにあげたお花だ」
まだおぼえてる。はなことばは、わたしがあむろおにいさんにねがったこと。
『えがおでいてほしい』
おにいさんも、わたしとおんなじみたいにわたしの事おもっててくれたのかな。おにいさんはわたしの事、すきでいてくれたんだ。安心して、せかいがゆらゆらとゆれた。
「おにいさん、わたしのこと
すきで、いてくれたのかなあ…」
「…うん、そうだと思うよ」
おかあさんはやさしくわらった。すべてゆめじゃなかったと、そう思っていいみたい。大きくなったら、おにいさんにありがとう、言えるかな。
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作者名:えだまめ | 作成日時:2019年10月30日 17時