もしものふたり【幼女になって読む話】 (ページ14)

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はむさんど　にページ14

「じゃあ、とっておきのハムサンドを」

そう言って作業をまた始める。カウンター席に座った彼女はちょっとだけ、涙で濡れた瞳をこちらに向けてから、小さく声をもらした。

「おにいさんはね、がまんしなくていいよ」

「え、何が？…あれ？」

にこにこと笑顔を浮かべた途端にぼろりと涙が零れて頬を伝って流れ落ちた。急に頬を伝った水の感覚で驚いてしまう。理由もわからず呆然としているとAちゃんの小さくてあったかい手が、涙を優しく拭った。訳もわからない涙がまだ溢れてくるもので、これじゃあどっちが子供なのか大人なのかわからなくなってしまう。止めようとしたけれど、優しい温度を持った手に安堵してしまったのか、涙は止まらなかった。拭いながら、Aちゃんはにこにこと呟く。

「おにいさんのこと、わたしね
　ひかりみたいだっておもうの」

「…ひかり？」

「おにいさんはやさしくて…
　あったかくて、きれいで、わたしね
　おにいさんのこと何も知らないけどね
　おにいさんがわたしのこと
　考えてくれてるのわかるよ、だから」

ぷつんとそこで声が途切れる。撫でられていた手が止まって、嫌な予感がしてぱっと視線を向けると声を抑えてAちゃんは泣いていた。ぼろぼろと大粒の涙が零れていく。結局のところ、俺が選んだことは正解だったのだろうか。彼女を一番傷つけているのは、俺じゃないのか。目をそらし続けてきた現実が頭を殴った。手を伸ばして涙を拭こうとした時、Aちゃんは顔を上げて嗚咽を漏らしながら声を紡いだ。

「でも、おにいさんとっ、ばいばいは…
　やだよお…う、うう」

「っ、Aちゃん…」

うわあんと声を上げて泣き出した少女を安心させられる言葉なんか持ち合わせちゃいなくて。だけど、どうかもう一度笑って欲しかった。考えるより先に体が動いて、小さな彼女をカウンター越しに抱き上げると優しく抱きしめた。