はむさんど いち ページ13
どうか、もう一度。
薄暗い店内、橙の灯りだけが弱々しく金色を照らしていた。小さく息を吐いて、手慣れた作業を始める。急がなければ、予定の時間が訪れてしまう、ふっと手元に目線を落とした瞬間、ドアが開いた。顔を覗かせたのは、招待した幼い少女だった。
「お、おにいさん…」
息が上がっていて、急いでここに向かってきた様子が窺える。まだ出来上がってないのだけど、と急に狂ってしまった予定に内心首を傾げる。しかしその想いを表には出さないようにして、柔らかい声音で話しかけた。
「いらっしゃい、Aちゃん」
一瞬目を瞬かせてから、彼女はにっこりと笑った。ここどうぞ、と声をかけると大人しくそこに座ってこちらを見つめてくる。
「どうしますか?お客様」
「あのね、おにいさんのハムサンド
わたし大好きだから…あの、たべたい」
弱々しくなっていく声に、この前は伸ばせなかった手を伸ばして頭を優しく撫でた。くすぐったそうに彼女は笑いながらも、目を伏せてこちらを見ようとはしない。笑顔にするすべが、君にハムサンドを振る舞うことしか思いつかなくて、声に出して注文を承る。
「じゃあ、とっておきのハムサンドを」
48人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えだまめ | 作成日時:2019年10月30日 17時