おわりまで に ページ2
「なんで」
不機嫌な丸山の声が頭上から降った。ただ返す言葉もなく俺はじっと手の中で温もりを失っていく缶コーヒーを眺めている。そんな俺の様子に言葉を無くした丸山は一人ぽつんと呟く。
「あの子だって、降谷が…安室透が側に
いる事を望んでる、わかるでしょ?」
「だからと言って、彼女を危険に晒す事は
許される事じゃないだろう」
ぐっと丸山が言葉に詰まる。ふっと見上げれば、辛そうに顔を歪めて息を静かに吐いた。何かを諦めたように。
「降谷がそれを望む?」
「望むさ、君の大切な子だ」
「そういう事じゃない、ちょっとくらい
本当のことを言ったら?」
じっと丸山の瞳を見つめた。本当のこと、最初から俺は偽ってなんていない。彼女の幸せを望むからこその決断、嘘なんてついていないのだ。嘘なんて。
そんな時、ぱたぱたとどこか気の抜けた足音がし始める。目をぱちと瞬かせれば、丸山の後ろの廊下から資料を手に抱えた風見が現れた。
「丸山さん…っあ、失礼しまし…うぐ」
「ごめん、急用」
俺と丸山を交互に見て引っ込もうとして行った風見の首根っこを掴むと、足早に丸山は消えていく。答えは聞けないまま、俺の中の答えもまだ上手く出しきれないまま。
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作者名:えだまめ | 作成日時:2019年10月30日 17時