彼らの世界 (ページ5)

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俺がいるから、ページ5

サグワside

はっ、として我に返った。

罪悪感に潰されそうだった。

だけど、すぐに俺は作り笑いをして

「んー？これ？猫に引っ掛かれ…

「ちげえよ！！！！」

大きな声で返されてビックリし、俺は数歩後退りした。

俺が呆気に取られている間、

「何でそうやって隠すんだよ！！！つらいならつらいって言えよ！！」

閑静な住宅街に、先輩の大きな声が再度響いた。

犬の散歩をしてた通行人が白々しくこっちを見る。

俺はなにも言えずに、俯いてそれを聞くのがやっとだった。

怒られる？見捨てられる？嫌われる？いじめられる？

…もう、関わってくれない？

そんな不安が頭をよぎる。

嫌だ。

「…なあ、お前さ、なに隠してんの。…俺にも、いえないこと？俺じゃ、頼りない？」

先輩は、今にも消え入りそうな声で言葉を紡いだ。

頼りなくなんてない、けど、言いたくはなかった。

弱いところを見せて裏切られるのが怖い。

「俺、なんでも聞くからさ」

先輩は俺の目の前まで歩いてきて、ぎゅ、と抱き寄せた。

俺の左腕を無理矢理まくると、その傷を見るなり、

「…気付かなくてごめん。もっと早く、気付いてれば。」

俺の背中を何度も優しく叩く。

なぜかそれが、すごく安心してしまった。

こどもじゃないのに。

「っ…まほ、せんぱ…」

地面にはぽつぽつとシミが増えていく。

それが自分の涙だと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

赤ん坊の時以来、初めて俺が人前で泣いた。