猫は丸くなる - ｲﾅｲﾚ - (ページ10)

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🐾柚原ページ10

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残れるやつだけ、なんて言ったのにほとんど皆が残ってくれた。

「校内に残るのはやめてよね」
「そんなぁ」

雷門にせっつかれ、身支度を整えた一同は商店街へと向かう。

「お前も来るんだよ」
「？！」

柚原の首根っこを掴むようにした円堂が眉を下げた。
「ゆずのこと、ちゃんと知ってもらいたいんだ。部員のみんなの事もお前に誤解して欲しくない」そう語る円堂に、柚原は仕方なく頷いた。

向かった先は何故かラーメン屋。
いや、何でラーメンなの？と首を傾げる柚原を置いて、慣れたようにズカズカと団体で入っていくサッカー部。

「ゆず、隣来いよ」

指定されたカウンター席へ座った柚原は、初めてのラーメン屋に周囲を見渡す。
前世では記憶上、外食に連れて行って貰えたことはなく。柚原の両親と外食へ行っても、レストラン系であり、このようなラーメン屋は人生初。

「何食べる？おすすめでいいか？」

必死に頷いた柚原に、円堂はよっしゃ！と笑い。
あっという間に全員の注文が入り、店主が慣れた手つきで作業に取り掛かる。

「もう少し場所を選べなかったのかしら」
「仕方ないだろー、腹減ってんだもん」

雷門の言葉にむすっとした円堂。
溜息をついた雷門に対して、木野や音無が部活終わりですし…となだめる。

「な、ゆずの話皆にしてもいーか？」

円堂に突然問われ、メニュー表に釘付けだった柚原は思考停止し、慌てて頷いた。

「ゆずは…たぶん、生まれてから話したことが無いんだ」
「それじゃ、今まで1度も？」

それは初めて聞いたと、雷門がぱちくりとし。豪炎寺も信じられないと表情を一瞬だけしては、直ぐに涼し気な顔へ。

動揺を隠せないのは一年。そして、何となく何も話さいことを理解していた染岡や半田はそうだろね、と納得。

「セイタイに異常は無い、けど“話せない”んだよ」

円堂の言葉に、この数ヶ月柚原を見ていた豪炎寺が呟く。

「話さないの間違いじゃないのか？」

ひくりと柚原の肩が震え、豪炎寺を見詰めた。
今まで『何故話せないのか』『どうして喋れないのか』そう問いかけられたことはあった。
小学生の頃も『どうして喋らないの？』と言われたけれど

豪炎寺の言葉は明確に、柚原が自身の意思で“喋らない”ことを見透かすように。

14年間も話すことが出来なければ、両親がそうであったように
色んな方法を試し、焦りを感じるだろう。

なのに、本人にその感情が一切見えないのだ。

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