猫は丸くなる - ｲﾅｲﾚ - (ページ9)

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🐾背中ページ9

‪🔆‬

今ここで、逃がしてしまったら。
二度とは会えない様な焦燥感。

突き動かされたように円堂は、逃げさろうとした柚原へ臆することなく手を伸ばした。

手首を掴まれた柚原が目を丸くして円堂を見詰め、全く振りほどけない力強さに顔を顰める。

「逃げないでくれ…！」

幼い頃、初めて会った円堂は小さくて。同じように小さな柚原を
『同い年だけど、守は男の子だからAちゃんを守ってあげてね』そう、母に言われた円堂は得意気になって頷いた。

まあるい瞳。
まるで、猫みたいに大きな目を見開いて円堂を見つめる柚原。

バスケやろう！野球やろう！一緒に書道やろう！何を誘っても、柚原は見向きもせずにひたすら部屋の隅で本を眺める毎日。

『なんで柚原さんて何も喋らないの？変だよ』

そう後ろ指をさされた柚原。両親からも腫れ物を扱うような存在に、円堂は奥歯を噛み締めてて声を張り上げた。

「ゆずは何も悪くない！だから、逃げなくていいんだ！」
「〜ｯ」

今も昔も変わらない円堂の真っ直ぐな眼差し。

いつか話してくれると、希望を抱き落胆していくその背中達ばかりなのに。
悪意のない純粋な質問が心を傷付ける言葉もあると知った円堂が。
円堂だけが、柚原に違う背中を見せた。

庇うように両手を広げて、小さな背中で柚原を守って。
いつだって、前へ出てきてくれた。

『ゆずは1人でも寝れるんだぞ！おれはいつも母ちゃんに汚い！って怒られるけど、ゆずはいつも、きれーにご飯食べるってほめられてるんだからな！頭もいいんだ！おれにべんきょー教えてくれる！漢字だってゆずの方が出来るんだ！！おれにできないこと、ゆずはたくさんできるんだ！ちょっと話せないくらい！何も変じゃないやい！！』

守っていた背中が今、正面に向き合って逃げるなと踏みとどまらせる。

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放課後、ぎこちない空気のまま部活動が始まり騒動の発端となってしまった松野がちらちらと柚原を視線で追いかけてしまう。

「マックス！練習に集中しろー」
「分かってはいるんだけど」

円堂に声をかけられ、肩を竦める松野に仕方ないな…と円堂は溜息をついた。

「みんな、部活が終わった後残れるやつだけ残ってくれ。柚原の事で話したいことがあるんだ」
「はいっす！」「はい！」「はいでやんす！」

口々に返事をした一年に対し、染岡と半田は顔を見合った。

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