🐾部員 ページ7
🔆
「ゆずー！」
あれから数日、サッカー部のマネージャーとして手伝いをする柚原。
練習中の円堂に声をかけられ、柚原は振り向き首を傾げた。
「練習が終わった後に河川敷に行くんだけど、ゆずも行くか？」
ふるふると首を振り、断った柚原は抱えていた籠を円堂へ見せるように。
「ん、いつもありがとうな！ゆず」
「……」
ぽん、と頭を撫でられた柚原は恥ずかしそうに顔を背け、ふるふると頭を振っては円堂から逃げるように駆け出していく。
脱水の終わった洗剤の香りがするタオル達。
部室の裏に竿を用意し、1枚ずつ丁寧に叩いて広げ、干していく。
「柚原〜？」
洗濯物を干していた柚原へ、風丸が声をかけに。
不思議そうに首を傾げる柚原に、風丸はにっと笑いかけ。
「俺達休憩なんだ、柚原も少し休憩しよーぜ」
こくりと頷き、部員達と休憩取ろうと言う風丸へ。
サッカー部員の目の前に出るのは気乗りしないらしい、柚原はそっちへは行かないと手を振る。
「え、」
円堂同様、ある程度柚原との付き合いはあるものの、何となくでしか意思の疎通が出来ない風丸は困ったように頬をかき。
「ま、向こうで休憩してるから。気が向いたら来いよ」
風がさぁっと吹いていく。
少しづつサッカー部と関わっていく柚原に、初めは扱いに困っていた部員達も、何も言わずに淡々と洗濯物や、ドリンクの用意。部室の掃除をする柚原をじっと見詰めていた。
「なー、柚原って何で喋らないの？」
ある日の放課後。
松野が半田へと問いかける。夕暮れの商店街を歩く影が伸びる中。
「何でだろ？染岡知ってるか？」
「さあ？知らねぇ」
ふーん、と空を見上げた松野が明日聞いてみよーかな。なんて呑気な事を口にして。半田も同意する中、染岡は冷たく吐き捨てた。
「どんな理由があるにしろ、挨拶もしねぇ奴は仲間として認められねー」
「相変わらずだなー、染岡は」
.
「ねー、何で喋んないの？」
休み時間。
廊下ですれ違った瞬間、思い出したように松野が柚原に声をかけた。
その一瞬、静まり返った廊下。
移動教室で教材を抱えていた柚原は、松野をじっと見つめ。
見つめられていた松野が少し困ったように『なんだよ』と言葉を続けた。
「あ、おい！柚原！」
何も言わず、早歩きで立ち去っていく柚原。
「なんだあいつ」
すれ違った染岡がきょとりと逃げ出した柚原の背中を眺める。
「……マックス、絶対に今聞くことじゃないだろ」
.
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2024年3月11日 2時
