🐾一歩 ページ6
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「無いよ、だからさいつかでいーんだ、いつか」
テーブルに顎を乗せた円堂が上目遣いで見詰めた。
「ゆずの声聞いたい」
いつか、でいい。それは小さなプレッシャーで、とうの昔に両親が諦めたこと。
「私も。いつか大人になってからでも、おばさんになってからでもいい…柚原さんの声が聞きたいな」
それは、ずっと これから先も関係が続くと当たり前に思う木野の思いで。
何か言わないとならない空気に豪炎寺くんが、目を泳がせ小さく頷いた。
「いつか、な」
心臓が痒い。
「いだ！！」
円堂の旋毛に教科書の角を突き刺した。
命中した円堂は涙目になって、なんでだよぉって情けない声。
少しだけ、信じたいと心が動いた様な気がした。
.
「柚原さん、お願いがあるんだけど…」
「？」
ホームルームが終わり、帰ろうとした私へ声をかけてきたのは木野。
少しだけ気まずそうにして、お願い、と手を合わせた木野に不思議に首を傾げた。
「サッカー部のマネージャー、手伝って貰えないかな？」
この通り！とどこかで見たことあるような頭の下げ方。
円堂か？円堂に習ったのか。
「マネージャーは2人居るんだけど…洗濯物とか、お願いしたくて」
円堂が確か騒いでいた、FFに参加していて練習にも熱が入り。
試合時にも、プレイヤー全員のフォローを3人で頑張っているのだとか。
少しだけ考え、頭を下げていた木野が頭を上げ。
目がバチりと合えば不安そうな瞳に、ちょっと、ほんのちょっとだけ。
小さく頷いた。
「〜〜ｯ 本当！？嬉しい！ありがとう！無理はしなくて大丈夫よ、出来ることでいいの。〜〜〜ｯありがとう、柚原さんっ」
「んむ？！」
高まった木野が荷物を放り投げて抱きしめてきた。
ぎゅうぎゅうに抱きしめる腕は強くて、でも。
優しい木野の香り。
「…何やってるんだ円堂、そんなところで」
「いや…ゆずと木野が楽しそうで」
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2024年3月11日 2時
