猫は丸くなる - ｲﾅｲﾚ - (ページ4)

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🐾新学期ページ4

‪🔆‬

春嵐。

桜が舞い散る道を歩き慣れたように進む。
雷門中学2年へと進学し、そろそろ夢ではなくて現実なのかもしれないと思い始めた。

走ると肺が痛むし、転べば普通に痛い。
食べなければお腹は空くし、包丁で指を切った時はじんじんとして痛いし、赤い血は垂れた。

うん、生きている。

「ゆず！」
「ｯ？！」

ばん！と背中を叩かれ、徐に見上げるとこの1年で身長の伸びた幼馴染である円堂守がそこに居た。

何度言ってもこいつは柚原をゆずはらと読み、勝手にゆずと呼び始めた。

「今年はサッカー部入らないか？」

ふるふると頭を振り、拒否していればだよな〜と分かりきっていると項垂れる。

「円堂くん、おはよう」
「秋！おはよ」

何故か私を間に挟み、2人は歩き出した。
うん、私を間にしたのか問いただしたいけれど、諦めて歩き出した。

「1年入ってくれるかな」
「きっと大丈夫よ。そうだ、柚原さん。今年は同じクラスみたいよ、よろしくねっ」

優しい木枯らしみたいで、少しだけ母に似ている木野。
こくりと頷けば、ぱっと嬉しそう。

春。

この季節が何だかんだと言って、1番嫌いだ。
自己紹介で挨拶をしなければならないのは苦痛。

校舎に入り、靴を履き変えればそっと2人から距離を取ろうとした、

「んぎ」

襟首を掴まれて慌てて見上げると、そこに居たのは

「おはよう」
「おー、風丸おはよ！なんでゆずの襟掴んでんの？」
「今逃げようとしてたから」

逃げようとしてない。睨み付けるとくしゃりと笑う風丸。

「ほら、一緒に教室行こう柚原さん」

手を繋がれ、木野に引かれて廊下を進むしかない。
保健室へ避難しようとしていたのにこの風丸とかいう奴のせいで。

「1年入ってくるといいな、サッカー部」

またな！と手を振ってクラスへ入っていく風丸へ、円堂が元気に返事をしてもまだ。木野は私の手を離さなかった。

定番の全員の自己紹介が始まれば、元気いっはいの円堂の声に
やっぱり、どんな人よりも優しい声の木野。

「柚原……柚原ー？次お前だぞ」

呆けていたら自分の番だった。
仕方なく席をたち、会釈をして座ろうとした瞬間

「柚原A！ゆずって呼んでくれ」

がたん！と円堂が立ち上がって代わりに伝えてくれた。
誰に頼まれた訳でもない、目立つことだってそんなに勝手出ない円堂。

「なんでお前が言うんだよ」

どっと、笑い声に包まれた教室。

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