🐾愛情 ページ2
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4歳になる頃、妹が生まれた。
母によく似た愛らしい面立ちに、父によく似た髪の毛。
ゆっくりと向けられていた愛が離れ、妹に注がれていく様子を見守る。
与えられていた玩具もぬいぐるみも愛情も、全てが妹に向かう。
「〜〜ｯんにやぁあぁぁあぁぁあぁあ！！」
耳元、爆音で泣き叫ぶ妹に思わず眉間に皺がよる。
ひとりでハイハイを覚え、ひとりで歩けるようになって。
まるで天使のような妹を溺愛する両親はやがて、視界に映すことを恐れるようにゆっくりと視線を背けていく。
やっぱり、要らないじゃないか。
ほんの少しだけ、期待してしまった。こんな都合のいい夢なら、手を伸ばしてみようと、手を伸ばしてみたいと。
けれど、やっぱり。
弟妹ができると長子は要らないという扱いを受ける。
自身の尊厳も権利も全てを踏みにじるように感じるのは、向けられていた愛情が裂かれる事への恐怖心だろう。
「ママ、どうしてお話しないの？」
「……それは、」
煙たがられる存在なのは理解していた。
生まれてなら一度も話さない子供なんて気味が悪いだろう。
「いいんだよ、ちゃんと会話してくれているだろう？」
「えー？わかんないよ」
ぽふ、と優しく頭を撫でられる。
「大丈夫だよ、言葉にしなくても伝わる」
そういい、優しく抱き寄せてくれた父の腕の中は暖かくて。
妹と共に抱きしめてくれた母からは、花の香りがして。
はじめて頬の触れた妹からはあったかい牛乳の香りがした。
「〜ｯ」
涙が溢れた。
優しい両親の温もりに、あったかくて可愛い妹。
それがいつか幻覚だと、失われる日が怖くて。
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2024年3月11日 2時
