42.【B組】 ページ42
職員室のプレートの前で深呼吸をして、ノックをした。
「失礼します。3年B組渋谷亮です」
ドアを開ければ、放課後の呼び出しで怒られている生徒や、進路相談をする先生と生徒で溢れかえっていて亮の声はかき消された。
「あ、キタキタ。ここじゃアレだし、相談室にでも行こうか」
亮たちの担任の先生である女教師は残念ながら金八先生ではない。
3年間ずっとお世話になっている安達先生。
「あ、何やアイツ〜俺達の安達を独り占めしやがって〜！」
手招きについていくと、回りにいた男子たちが騒いでいたが、亮はそれどころではない。
「どうした？座ってええよ？」
黒いスーツに短いスカートの英語教師は、セミロングの茶髪を片耳だけかけた。白いシャツのボタンがはちきれそうなほどのボインなお胸が、高校男児の前で揺れる。
「あ、いや、はい、失礼します！」
向かいに座った亮は何故か笑われた。
「さっきお父さんからお電話あったんやけど、章大、心配やね」
「あぁ…しばらく入院になるんで、ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」
亮は机で見えないはずの股間を乱暴に叩いた。
いくら双子が一緒のクラスだからって、下の名を呼び捨てにするような策士な女に頭を下げる。
「迷惑やなんてっ！落ち着いたらお見舞い行くからね…ただ、皆、受験生やから…」
もうすぐ定期テストもあるし、と付け加えた安達はさっきと反対の耳に髪をかけた。
「…邪魔はするなってことですよね」
さっきまでのドキドキを返してほしい。
色々な場面で世話にはなっているが、学校教師なんてそんなもんで、面倒なことはこういう若手の先生に回されているのだろう。
「先生、ありがとうね。んー。卒業…うん、いや、うん…卒業まで見届けてください」
「…今回の入院が長引いちゃうと、卒業できるか微妙やねん」
安達の言葉に亮は思わず目を下げた。
「だって…4月は頑張ってましたよね？早退は何回かしたけど…」
あの時とあの時と…亮は指をおるが両手の指で足りそうな気がした。
「亮、辛かったら、何でも相談して。私は二人が立派に卒業するところが見たいねん」
卒業やなくて、二人が進学するところが見たいって言うでしょ？
「分かりました。先生、ありがとうございます。じゃ」
先生も知ってるんだ。初めて受けもった生徒が卒業前に死ぬかなんて残酷だね。
「ちょっと黙っとれ、俺」
亮は相談室を出て、もう一人の自分にそう言ったが、周囲の声にかき消された。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 196人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
light(プロフ) - 奏空さん» 初めまして(^^)本当に少しずつですが、全貌が明らかになってきます！読み返すと繋がっていたりするはずなので、また来てくださいね。ありがとうございます！ (2017年3月20日 8時) (
レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
奏空(プロフ) - 初めまして。話に一気に引き込まれ更新を楽しみに、いつも読ませていただいてます!! 少しずつ登場人物の背景が見え始め、ますます続きが気になってます(＞＜) 大変だとは思いますが、頑張って下さい ！ (2017年3月20日 0時) (レス) id: 90bfce9f42 (このIDを非表示/違反報告)
light(プロフ) - パンジーさん» こんばんは(^^)コメントありがとうございます！引き続き更新頑張ります。応援よろしくお願いします！ (2017年3月19日 23時) (レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
パンジー(プロフ) - とても面白いです。今のままで大丈夫だと思いますよ。 (2017年3月19日 21時) (レス) id: 700a76e6c1 (このIDを非表示/違反報告)
light(プロフ) - 章々さん» こんばんは(*^^*)コメントありがとうございます！嬉しいお言葉！ズルズルとハマっちゃって下さい（笑）頑張ります。 (2017年3月16日 23時) (レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：light | 作成日時：2017年3月12日 10時
