29.【重なる】 ページ29
車を降りてから、すばるも信五も半無意識的に走りだしていた。
裕は二人を心配しながらも、一人、助手席に残された亮のペースに合わせ、きちんと車の鍵をかけて、ゆっくり病院に入る。
待ち受けていた和也は、悲しい目をしていた。
裕は自分があまりにも冷静で、怖くなった。
「信ちゃんっ！」
信五の姿を捉えると、忠義は治療室の前のベンチから反射的に立ち上がり、駆け出す。
「…たつ…ゴメンな。ありがとうな。怖かったやろ」
「…苦しそうやった…」
素直に抱きつく辺り、やはり我が家の末っ子であるが如何せんデカイ。高校に入って伸びた身長のせいで、信五もあまり格好がつかなくなってきた。
「章大は！？」
すばるは忠義の横に座っていた医師の肩を掴んだ。
「大丈夫。まだ頑張ってるから。…そんなに苦しいなら…きちんと僕の話を聞いてればいいのに」
智の柔らかい口調が、すばるを突き刺す。
「…智くんが、ずっとついててくれてん」
ホロッと涙を一筋流している忠義の言葉。
信五の胸には一人にさせた後悔が襲う。
ふにゃふにゃと笑ったその人は、すばるの腕を振り払って言った。
「忠(チュウ)良く頑張ったね」
そして、少し背伸びをして忠義の頭を撫でてから、信五に頭を下げた。
「…しょ、章大をっ！…よろしくお願いします」
信五も頭を下げるが、振り返らない智はそのまま治療室に入っていった。
“ハルを…助けてっ…くださいっ…”
あの時も、彼は振り返らなかった。
病院に後から着いた隆平は状況が掴めないでいた。
直感的に、探している人は精神科だろうと踏んでビンゴ。裕が頭を下げるのが見えた。
「で、すばるは？」
和也がため息をついた。その時だ。
「腕の怪我は大したことないから大丈夫だよ。隆ちゃん、止血上手だったね」
額に汗を光らせてるあたり、すぐに走ってきたのだろう。雅紀は得意のスマイルで微笑んだ。
隆平がパァと顔を明るくした。
「…よかった…俺、医大生のくせにパニクっちゃってさ…」
隆平の汗を拭うしぐさで少し場がなごむ。
裕が二人の会話を気に止めず、また頭を下げたので、また雅紀は独特の笑い方をした。
「ヨコちゃん、やめて。笑 亮くんは和也が診てるので、ひとまず、章大くんたちのとこへどーぞ」
わざとらしい敬語にやっと裕が笑った。
「…いいけどさ？本当に。落ち着いたら迎え来てくださいね？」
言葉と非対照的な和也の表情に隆平は亮を重ねた。
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light(プロフ) - 奏空さん» 初めまして(^^)本当に少しずつですが、全貌が明らかになってきます！読み返すと繋がっていたりするはずなので、また来てくださいね。ありがとうございます！ (2017年3月20日 8時) (
レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
奏空(プロフ) - 初めまして。話に一気に引き込まれ更新を楽しみに、いつも読ませていただいてます!! 少しずつ登場人物の背景が見え始め、ますます続きが気になってます(＞＜) 大変だとは思いますが、頑張って下さい ！ (2017年3月20日 0時) (レス) id: 90bfce9f42 (このIDを非表示/違反報告)
light(プロフ) - パンジーさん» こんばんは(^^)コメントありがとうございます！引き続き更新頑張ります。応援よろしくお願いします！ (2017年3月19日 23時) (レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
パンジー(プロフ) - とても面白いです。今のままで大丈夫だと思いますよ。 (2017年3月19日 21時) (レス) id: 700a76e6c1 (このIDを非表示/違反報告)
light(プロフ) - 章々さん» こんばんは(*^^*)コメントありがとうございます！嬉しいお言葉！ズルズルとハマっちゃって下さい（笑）頑張ります。 (2017年3月16日 23時) (レス) id: 23f6197312 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：light | 作成日時：2017年3月12日 10時
