【文スト】私のお兄ちゃん《芥川龍之介 》

３７話 ページ43

貴方side

時刻は、１９時３５分。時間が遅いのは、完全下校が１９時になったからだ。

そろそろご飯の用意しないと、と思い宿題をやめ片付けた。

冷蔵庫の扉を開け、中を見てみる。

材料は有る。けど、此れを如何するか……

『あ、此の材料は…』

此の材料はずっと前、お姉ちゃんと料理をした時に使った野菜に肉。

『……ッ』

思い出すと涙が出てしまった。楽しく仲良く話して野菜を切って、料理をしていた記憶。

まだ、こんな事になるとは思っていなかった子供の記憶が、たまらなく愛おしい。

あの頃に戻りたい。少しだけでも良いからと。

お兄ちゃんたちが帰ってくるのが今より早かった頃に戻りたいと何度願ったか判らない。

どんなに願っても、もう遅い。

何処で何を間違ったのか。

お兄ちゃんたちが悪いのか、それとも私が悪いのか判らない。

だから、お兄ちゃんたちが早く帰ってこれるのを待って、本当の事を云ってくれるまでまで待っていようと。

涼ちゃんが云っていたことは、本当のことかも知れない。

けど、私は幻覚なんかじゃないと思っている。

あの優しい声と、温もり、笑顔に偽りなんかあるわけ無いと思うから______

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