◆迅悠一【指先】 ページ9
【声高々には語れないが】
初めて会った第一印象。何故か同情を抱いてしまうように、儚い雰囲気の人。あれからそれなりに月日も過ぎたし、時間も経った。
旧ボーダー設立時からずっと見ていた背中は、あまり良いものとは思えない。彼もそれは理解していただろうし、関わらないこと。
それが暗黙のルールだった。旧ボーダー設立時のメンバーで、私と彼だけが一度も仲良くしたことがないと思う。それだけだ。
『疲れたなぁ……』
防衛任務はこれだから疲れる。まだ高校生だ、華の乙女だ。最後の一年はもっと有意義に過ごさせろ、なんて。言えるわけない。
冬島隊の攻撃手だから前衛で奮迅するし、当真との連携は結構ギリギリでやっている。アイツ、腕は良いから信頼できるけど。
「お、Aじゃん」
『……迅、さん』
後ろから声を掛けられて、肩が揺れた。あまり関わらなかったはずの日常。それが本部からの帰り道で崩れるなんて、思わなかった。
『えと、久し振りですね』
「あー、まぁね」
『大学からの帰り、とかですか?』
「あれ、言ってないっけ?俺は暗躍中」
『……あぁ、成る程。無職ですか』
「言い方にトゲがあるなぁ」
『やーい、実力派無職ー』
「めっちゃ棒読みだし」
呆れたように苦笑されたのに訳も分からずイライラしたので、大人しく隣を歩く。すぐに会話が終わって足音だけが響いた。
迅さんも気まずそうにそっぽを向いて、少しだけの罪悪感と嫌悪感。やっぱりこの人は苦手だ、と。深く想いが心に刻まれたのだ。
彼は私に対して。どんな感情を抱いているんだろうか、やはり嫌いとかなのかも。でも、彼は優しいから。そんなことは思わない。
「……Aは夜中に防衛任務?」
『あ、はい。本部に泊まってくつもりだったんですけど、予備の衣服が切れてたんで』
「昔からしっかりしてそうで抜けてるよな」
『ちょっとそれ、どういう意味ですか』
「んー……」
考えるような素振りをしてから、イタズラっ子みたいにニヤリと笑って。私の手をつかんで爪の先に優しく口付けを降らせた。
『え』
「防衛任務、お疲れっていう?じゃあまた」
気付いたら家の前。トリオン体で夜闇に溶けた背中の余韻を見つめながら、顔を真っ赤にして頬を触る。熱かったのは言うまでもない。
(意気地なしだよなぁ、俺)
(未来が見えるほど、怖いものはない)
(好きだって伝えられたら良かったのに)
【爪先=賞賛】
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きざみん - こんばんはセニオリスさんの小説好きです。失礼ですけど空閑君って書けますか?書けたらよろしくお願いします。キスの場所はどこでも良いので、出来たらよろしくお願いします。 (2023年2月22日 21時) (レス) id: 4cee241057 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - イツキ108さん» 此方こそ、返信が遅れて申し訳ないです。あまり期待に応えられていない文章になってしまってすいません。リクエスト有難う御座いました。 (2020年5月18日 22時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
イツキ108(プロフ) - セニオリスさん» こんばんは。以前文ストの花言葉のリクエストをさせて頂きました、イツキです。お礼をリクエストさせて頂いたページにと思ったのですが、コメントが出来ず他ジャンルでのページの返信になりご迷惑をおかけします。リクエストのお礼が後れた事、大変申し訳ありません。 (2020年5月7日 19時) (レス) id: ed04064b47 (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - 白縋さん» 了解しました。書ける時に好きなタイミングで書かせていただきます。 (2020年2月24日 11時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
白縋 - リクエスト/キャラ:二宮さん 、カゲ キスの場所:腰 お目通しいただければ幸いです。 (2020年2月24日 3時) (レス) id: cc60f72ddc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2020年1月2日 10時