苦手度22% ページ27
＊
朝から、ため息をつきたくなるような事が起きて早足で教室に向かおうとしていた筈だ。なのに…
「それで、Aの嬢ちゃんは何故昨日来なかったのだ？」
『す、すみません…』
何で、私は壁際に追い詰められて怖い顔をしている零先輩に詰め寄られているんだろうか？
いや、理由は自分でも良くわかっている。
ほんの数分前のこと。
ため息をついたまま、教室に向かう私と零先輩が鉢合わせしてしまって
「Aの嬢ちゃん！昨日は、何故来なかったのじゃ？体調が悪かったのか？」
珍しく外に出ていた零先輩に昨日の事に、問いただされたのだ。
それを、上手く誤魔化せば良かったのだけれどそんな考えを混乱した私は思いつかなくて
『な、何でもないですっ！』
なんて、意味不明な事を言ってしまい零先輩の機嫌を損ね冒頭に戻ったのだ。
心底自分のボキャブラリーの無さが嫌になる。
もっと、上手く嘘をつかないといけないのに。
「わんこも、心配しておったぞ。あいつらしくねぇ…と」
あぁ、そういえばあの夜、晃牙君のメールに返信してから朝光牙からまた返信がきていた気がする。
メールの内容は、怖くて読む勇気が無かったけど。
『すみません』
「嬢ちゃんは、色々抱えすぎておる」
眉を下げて私の事を見る零先輩に、無意識に下がる視線。
零先輩は、苦手だ。
何でもかんでも、見透かしていて全部知っている様に思えるから。
『ご、ごめんなさい』
なんだが、責められてるような気がして謝る。
そんな私の頭上で、零先輩がため息をつく。
「だからこそ、心配なんじゃ」
さっきとは違う優しい声音と、頭に乗った温かい感触に思わず顔を上げる。
零先輩が、赤い瞳を細くして優しい笑顔を浮かべていた。
「たまには、誰かに頼るのもいい事じゃよ」
乗せられた温もりが、何倍にも暖かくなった気がした。
それと同時にその温もりが、私にはない事に悲しさを覚えた。
温もりを、頼りかたを、知らない私は、また誰かを傷つける。
『そうかもしれませんね…でも、私には無理だっ…』
そんな事実に気がつきたくないから、私はまた逃げる。
作ったブサイクな笑顔で、零先輩の緩くなった手の隙間を通り抜ける。
その温もりを一度、知ってしまったらもう戻れない…
そんな気がして、私は教室に向かい駆け出した。
「嬢ちゃん…」
そう呟いた声が、まるで子を心配する親の様に温かかったのなんて
彼女に届きはしないし知らない。
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夜月詩音(プロフ) - 雷月ささめさん» ありがとうございます！過去の話は、自分の中でも特にお気に入りの下だったのですごく嬉しいです^ ^これをきっかけに、流星隊好きが増えてくれたらな…って思ってます！ (2016年6月4日 22時) (
レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
雷月ささめ(プロフ) - 夢主ちゃんの正義が苦手な理由、過去とか、凄いゾクゾクしました…！流星隊だから気になったんですが見惚れる内容です〜！これからも応援してます！ (2016年6月4日 12時) (レス) id: 85dc925e9d (このIDを非表示/違反報告)
夜月詩音(プロフ) - 湊さん» ありがとございます！！作った時、面白いのかな？って凄い不安になってたので…そう言っていただけると嬉しいです！ (2016年5月25日 19時) (レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します、この作品を読ませていただきました！凄くいい話で、なんというか、もう最高です！！！これからも頑張ってください！応援してます！！！ (2016年5月25日 11時) (レス) id: 54cc045c92 (このIDを非表示/違反報告)
夜月詩音(プロフ) - 竜さん» ありがとうございます！自分でも書いてて、こういう人って実際にいたりするのかな？とか思ってましたw更新も、なるべく早く出来るように頑張ります( *｀ω´)b (2016年5月17日 21時) (レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜月詩音 | 作成日時：2016年5月1日 22時
