苦手度10% ページ14
*
『……はぁー』
食堂から出て行って、約10分。
私は廊下の端っこで動けずにいた。
もう、授業が始まる5分前だと言うのに私の足は一向に教室に向かない。
『あー、教室行きたくないぃ…』
誰もいない事を良い事に独り言を喋る。
朝と、全く変わっていない展開に自分がとことん情けなく思える。
『何で、こんな事に…』
ここに転入してきて、それなりに楽しくやってきていたはずだ。
昔とは違うと、思ったのに。
結局、同じだったんだ。
_____何か、困った事があったら言ってくれ!
_____プロデューサーやってくれないっすか?
真っ直ぐな言葉に逃げてしまう私はあの時と何1つ変わってなかった。
『もう、嫌だよっ…全部』
いっその事、全部無かった事になれば良いのに。
消しゴムで消して、
くしゃくしゃに丸めて、
全部、ゴミ箱に捨てることが出来たら良いのに。
ポタリ。私から溢れた雫が床に1つ染みをつくった。
「A?」
名前を、呼ばれた。
思わず、顔をあげてしまった。
照らされる光を受けて、輝く灰色の髪の毛と揺れる猫目が私の瞳に映る。
『い、泉さんっ…』
あぁ、本当…タイミングが良いのか悪いのか。
「あんた、こんな所でどうしたの?」
私を見て、驚いた様に目を見開く泉さん。
泣いてました。なんて、言えないなぁ。
だけど、泣いてぼーっとしている私の思考じゃ上手い言い訳は出て来なかった。
『何でもっ…ない、です』
震えた声で、そう言い返すしか無かった。
勿論、そんなバレバレの嘘で泉さんを騙せる訳もない。
「はぁ?ちょっ…あんた、泣いてるじゃん!」
泉さんの綺麗な手が私の頰に触れる。
その優しい手つきに全部話してしまいそうになる。
_助けて。怖い、嫌。こんな、自分消えちゃえば良いのに。わかんないよ。
口をキュッと結んで、下手くそな作り笑いを浮かべる。…そうでもしないと、うっかり溜めた言葉全部、言っちゃいそうになるから。
「下手くそな笑顔…もっと、上手に笑いなよ」
『あはは…自分が、嫌になりました』
なんとか、絞り出した意味不明な発言でも泉さんはちゃんと分かってくれていた。
「そっか…」
一言呟いて私の隣に座った。
泉さんの良い所はこういう所だ。
深く詮索する訳でもなく、話を聞いてくれない訳じゃない。
あぁ、心地よい。
45人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜月詩音(プロフ) - 雷月ささめさん» ありがとうございます!過去の話は、自分の中でも特にお気に入りの下だったのですごく嬉しいです^ ^これをきっかけに、流星隊好きが増えてくれたらな…って思ってます! (2016年6月4日 22時) (レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
雷月ささめ(プロフ) - 夢主ちゃんの正義が苦手な理由、過去とか、凄いゾクゾクしました…!流星隊だから気になったんですが見惚れる内容です〜!これからも応援してます! (2016年6月4日 12時) (レス) id: 85dc925e9d (このIDを非表示/違反報告)
夜月詩音(プロフ) - 湊さん» ありがとございます!!作った時、面白いのかな?って凄い不安になってたので…そう言っていただけると嬉しいです! (2016年5月25日 19時) (レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します、この作品を読ませていただきました!凄くいい話で、なんというか、もう最高です!!!これからも頑張ってください!応援してます!!! (2016年5月25日 11時) (レス) id: 54cc045c92 (このIDを非表示/違反報告)
夜月詩音(プロフ) - 竜さん» ありがとうございます!自分でも書いてて、こういう人って実際にいたりするのかな?とか思ってましたw更新も、なるべく早く出来るように頑張ります( *`ω´)b (2016年5月17日 21時) (レス) id: 9103400878 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜月詩音 | 作成日時:2016年5月1日 22時